That leaves your soul to bleed


結局、リーマスの問いに答えることができなかった。

「再び戻ってきたようじゃな」

セブルスとリーマスが消えた後にダンブルドアはそう言って微笑んだ。
この世界のダンブルドアもまた、自分のことを理解しているらしい。そうなるとこの世界と以前、自分のいた世界との違いをよく分かっているだろう。
ティファニーは注意深く口を開いて確かめるようにゆっくりと問うた。

「以前、私が在学中に先生がお話しされたお伽噺のこと、憶えていますか」

「勿論だとも」ダンブルドアは頷き、椅子に腰をゆっくりと下ろした。
落ち着きを払ったダンブルドアに向かい側に座るように視線で言われ、大人しく腰をそこに下ろした。

「『究極の純血』じゃったな」

やはりこの世界のダンブルドアは以前いたダンブルドアと変わらないようだ。彼の認識はどこまであるのだろう。
ダンブルドアは静かにこちらを見つめ、続けた。

「君が現れるまでは夢だと思っておったが」

「私が現れたことであのときの会話が現実であると、そう確信されたのですね」

「その通りじゃ」

ということは世界の区別は残念ながら彼には分からないことになる。
憶えていることはあの時の会話だけ。ダンブルドアがヒントを握っていたと思っていたがやはりそう簡単にわかるわけではないらしい。
自分の正体とこの不思議な体験はいつになったら解明できるのだろう。そして自分のいるべき場所は一体どこなのだろう。

「あの先生。こちらの世界の『例のあの人』は未だに生きているのですか」

ダンブルドアは初めて眉間に皺を少し寄せ、怪訝にこちらへ視線を遣った。

「すると君と紅茶とクッキーを食べながらお話しした世界のヴォルデモートは滅びたのかね?」

「ええ、『不死鳥の騎士団』が死闘の末に倒しました」

ダンブルドアは考え込むように一度、口を閉ざして黙り込んだ。
それから思いついたように顔を上げて口を開く。

「ヴォルデモートの姿を見たことは?」

「いえ、ありませんがとてもハンサムと噂で聞いたことがあります」

「なるほど……。君がいた世界のヴォルデモートは『分霊箱』を創り出していなかったようじゃ」

『分霊箱』?ティファニーは眉を顰めた。
ダンブルドアはこちらを見ていなかった。考えるように視線は宙へやられている。

「この世界ではまだ生きていると?」

「ワシはそうだと思っておるが魔法省は認めておらぬ」

「重ねてお聞きしますがこの世界の『私』はどこにいるんですか?セブルスもリーマスも私を知らなかった」

視線が再び重なる。ダンブルドアは双眸を細めた。

「いえ、正確には知っているみたいでしたが“似ている”“名前まで一緒”だと言われました。この世界の私は?いるんですか」

ダンブルドアは黙りこくったままだった。痺れを切らしてティファニーは立ち上がった。
そしてなるべく冷静な口調を心掛けて口を開く。

「隠さないでください。私はこの姿でも一度ここを卒業して成人し、社会人になった身です」

「ティファニー…ワシにもわからないんじゃよ」

「わからないとはどういうことです?」

不安に駆られ、間髪を入れずに聞いた。ダンブルドアはやはり落ち着きを払ってまま、冷静に答えた。

「何が真実か、ということじゃ」

ティファニーは怪訝に椅子へ腰を下ろした。

「何が…真実か…」

「心してよく聞くことじゃ」






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