Please, please, don't go away

シャワーを浴びながらティファニーは鏡を覗き込んだ。真っ直ぐ自分が見つめ返してくる。
シャーロックはその後、気にすることなく口づけを続け、茫然とするティファニーを置いていくように流れでティファニーを抱いた。
見えない何かに嫉妬し、刻み込むような熱いものだった。
それを思い出し、ティファニーは複雑な気分になる。自分にはリーマスがいる。なのに意味のわからない現象に巻き込まれて、心の中に住む人が1人増えた。
鏡に額を押し付け、「は…」と短く熱い溜息を零す。すっと別の手が伸び、濡れた鏡に触れた。
首の後ろに濡れた唇の感触を感じ、思わずまた息を漏らした。

「シャーロック…入ってきてもいいなんて言ってないわよ」

「ああ、勝手に入った」

「もう…」

彼の手が腰に回り、くるりと正面を向けさせられる。
濡れた冷たい鏡に背中が押し付けられ、身を震わせた。シャーロックを見上げ、くすくすと笑った。
額を合わせ、口づけを交わそうと顔の距離を縮めてきたシャーロックの動きが止まった。
怪訝に思い、至近距離から彼の瞳を覗き込めば、彼は静かに自分の背後を見て驚いていた。
考えたり聞いたりするよりも自分の目で見た方が早い。シャーロックの視線を辿って振り返った。
信じられない光景だった。原型を留めていない鏡。水銀のように鏡は解け始め、渦のようにくるくるとそれは渦巻いていた。
成る程。そう呟かれた声を振り返る。シャーロックは鏡からティファニーへ視線を移した。

「これが君の世界の入り口ってわけか」

「え?」

「今回は僕も呼ばれてるってわけだ」

「そんな…」

シャーロックはマグルだ。そんな彼は魔法界では非力に等しい。

「ならば僕も応えよう」

シャーロックはティファニーを見下ろすとサッと半身を屈めて頬に唇を落とした。
そして片手でティファニーを抱き寄せると空いた片手を渦巻いた中心部へと沈める。
そのまま体は勢いよく吸い込まれ、息が出来なくなった。まるで『姿現し』だ。そう思いながらティファニーは彼の腕の中で目を閉じた。



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