Without notice

図書館で本を読みながらシャーロックを待った。
しかし一向に彼は現れない。首を傾げ、腕時計に視線を落とす。
もうすぐで1時限が終わってしまうというのに。ティファニーは溜息を零し、本を元の本棚へと戻した。
ベルが鳴った。1時限は終了。彼は次の授業へ出席する気がないのか。

「hi」

「ルーピン先輩」

鞄片手のグリフィンドール生はニッコリ笑った。

「そんな畏まった呼び方しなくてもいいのに」

「あ、ごめんなさい。ついそう呼んでしまって」

「いいんだ、僕は気にしてない」

2人で図書館を出ながらリーマスは続けた。

「こないだの特別授業、本当にすまなかったね」

「こないだの特別授業?」

こないだがいつを指すのか、どの授業を指すのか分からず首を傾げるとリーマスは困ったように笑った。

「君たちとの合同授業のことさ。魔法薬学で僕が失敗したせいで」

「いいのよ。あれは事故なんだから仕方ないわ」

すかさずそう返し、引っかかりを覚える。そういえばなぜ自分はリーマスと同じ授業を受けたのだろうか。
自分とリーマスは年齢も学年も幾つか離れている。授業が合同になるはずがない。
しかし徐々にわかってきた。この世界にも自然と物事を理解する“装置”があるらしい。
自分の学年のレイブンクロー生はみんな賢いらしく上の学年との合同授業が組まれている。
いささか無理やり過ぎると思わなくもないがもうこの際何でも有りだ。
もっと不思議なことが思っている今では特に冷静にそう考えることができた。

「ねえ、ところでシャーロックとジョンを知らない?」

「シャーロックと、ジョン?君の学年の子にそんな子いたかい?ああ…それとも下?」

「シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンよ」

焦れったくなってフルネームでそう告げれば首を傾げられる。

「どこの寮の子だい?」

「シャーロックと私は同じ寮でジョンは…」

ティファニーは言葉を止めた。ジョンはグリフィンドールのネクタイを締めていた。
リーマスの胸元を見遣る。やはり。やはり彼はバッジをつけていた。監督生のバッジを。
彼は自分の寮の子は少なくとも苗字を聞けばわかるはずだ。ということはこの世界には存在しないということ。
先ほどまではいたのに?不可解なことが続き、頭が混乱する。怪訝そうに自分を見つめるリーマスに気付き、ティファニーは慌てて取り繕うように微笑を浮かべた。

「ごめんなさい、さっきずっと本を読んでいたものだから物語と現実を混同してしまって」

「少し読み過ぎなんじゃないのかい?」

「そうかも。気をつける」

「ねえ、今度のホグズミード行き一緒にどう?」

懐かしさにティファニーは思わず顔を綻ばせた。

「うん、勿論。行きたい」

「じゃあ、決まり。詳細は今度決めよう。じゃあ、また」

手を振り、去っていくリーマスの背中。
ティファニーはそのままUターンした。向かう先は教室ではなく、違う場所。
これは可笑しい。魔法ではない、とても不可解なことだ。
確かに朝、シャーロックとジョンはいた。ホグワーツの制服を着て。
しかし突然、この世界から姿を消した。一体、自分の周りに何が起きているのだろう。
いや、周りではない。これはきっと自分の問題だ。

「ダンブルドアはいらっしゃるのかしら」

廊下を走り抜け、階段を駆け上がった。



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