strawberryのような口づけを


カラン、カラン。氷がコップに当たって音を立てる。
陽葵はストローで掻き混ぜながら、ガラスの中の薄い綺麗な茶色を楽しげに見つめていた。
暑い夏の日は冷たい紅茶に限る。
コップの中は微かに甘いイチゴの匂いがする。
レオンは落ち着け、と自分に言い聞かせながら彼女と同じストロベリーティーを一口飲んだ。
香りは甘いが味はさっぱりしていて美味しい。
陽葵とは幾度となくデートを重ねたがまだキスは一回もしていなかった。
それをアシュリーに言ったところ、彼女に呆れられ、有り得ない、というのだ。
確かに自分でも慎重な方だと思う。付き合い始めて5ヶ月だ。あと1ヶ月で半年。
これは流石にマズイとレオンも思った。今までの経験としては完全にイレギュラー。
今までだったらもう既に体の関係にまでは進んでいる。
そして今日こそはキスをするんだ、と意気込んで本日のデートに臨んでいるわけである。
だがキスなんてしたことないわけではないのにいざ行動しようとなると妙に緊張した。

「レオン?」

「…え、あ、何だ」

吃るレオンに首を傾げながら陽葵は皿に添えられたクッキーをサクリと食べた。
彼女が焼いてくれたクッキーに、淹れてくれた紅茶。

「美味しくなかった?」

眉根を下げて不安そうな表情を浮かべる陽葵にレオンは慌てて首を振った。

「いや、美味しい」

彼女の双眸が訝しげに細められるのを見てレオンはクッキーを二枚食べた。
アールグレイ風味のクッキー。本当に彼女の作るものは何でも美味しかった。

「じゃあ、どうしたの?さっきから、上の空みたいだけど」

これは意を決して行動するしかないかもしれない。
不思議そうに見つめてくる陽葵に目を閉じるようにお願いすると静かに閉じてくれた。
一気に彼女の顔との距離を縮める。
あとは血色の良い唇にキスするだけ…。ああ、緊張する。
不意に陽葵の瞳が開かれた。それに驚いて固まっていると彼女は焦れったそうな顔をしてレオンの唇に子供じみたキスを落とした。
柔らかい感触に驚いていると陽葵はヘへへと照れ臭そうに笑った。

「キスしちゃった」

レオンが彼女の行動に驚いていると陽葵はオーイとレオンに呼びかける。

「イチゴの味がしたね」

やはり照れ臭そうに言う陽葵にレオンは深々と唇を重ねた。
慌てる彼女を無視してレオンはしばらくキスを続けた。
ストロベリーのキスはヤミつきになりそうだ…。




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