合衆国のエージェントさんの一目惚れ

レオンは悪態をつきながら、自分の搬送された病院の室内を見渡した。
今日から入院を言い渡されたのだ。原因は過度のストレスによる胃潰瘍。
自分はストレスには強い方なはず。
だから、何かの間違いだとレオンは医者に訴えたが医者は無言でレントゲンを指差し哀れむような視線を向けてきただけだった。
ストレスといってもあまり心当たりがない。
あるとしても彼女にフラれたくらいだ。
考えると胃がキリキリと痛む。息をつきながら、室内でジッと安静を心掛ける。
夕方頃、ウトウトと寝そうになったところ控えめなノックの音が聞こえ、レオンは現実に引き戻された。
せっかく気持ちよく寝ようとしていたのに。
誰だ、なんて心の中で文句を呟きながら、寝返りを打ち寝るフリを続けた。
ドアが控えめに音を立てて開き、足音が聞こえた。

「えーと…レオンさん?」

可愛い声だな、なんて思った。
しかし起きるのが面倒でレオンは目を閉じたまま、寝るフリを続けた。
しかし誰だろう?
自分のこんな可愛い声の知り合いなんていなかった気がする。
ゆっくりと遠慮がちに近づいてきたような気配。そして自分の髪がそっと撫でられた。
そんな感触にピクリと瞼が動いてしまう。

「寝てるのか…後でまた来ますね」

寝てる人(いや実際は起きているが)にそんなこと言っても分からないだろう。
恐らく看護師だろう。
目を薄く開けば、律儀にペコリとお辞儀する白衣姿の女性。
可愛らしい、レオンは笑みを堪え、目を開けた。
それに気づいた看護師は「あ」と声を小さく上げて近づいてくる。

「ごめんなさい、起こしました?」

「いや大丈夫だ」

元々起きてた、という言葉を呑みこみ、レオンはちゃんと彼女の顔を見上げた。
その瞬間、ドキリ、と心臓が跳ね上がる。

(…可愛い)

可愛い女ならたくさんいるが彼女は何というか何かが違う。
純粋そうな真っ直ぐな双眸。まさに、白い天使――白衣の天使だ。
レオンは彼女の胸元の名札に視線を遣った。
陽葵・日名と顔写真と共に表示された名前。

「レオンさんを担当させて頂く、陽葵です」

彼女は担当看護師というわけか。
レオンは内心ドキドキしながらそっと微笑み、手を差し出した。

「よろしく頼む」

「はい」

目を細めて微笑む陽葵は手を差し出してレオンを握手を交わした。
細くて冷たい手だったが、それが何とも女性らしい。
レオンはそんな中、どういう風に彼女を口説くか頭の中で考えていた。




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