君の天使はもらっていくよ

愉快だ…!とっても僕は愉快。
ジム・モリアーティは楽しそうに口元を吊り上げた。
歪んだ笑みでモリアーティは腕の中の女――アリス・ブラックフォードを見下ろした。
ぐったりと体は動かないし、目だって閉じたまま。
あるグループから見たら神にも等しい姫君、他のグループから見たら悪魔の生贄、それに殺すべき存在。
人とは愚かな生き物だ。こんなただの人間に対して罪を犯そうとしているし、崇める。
しかしそんなただの女にモリアーティは興味を持った。自分の職業をピタリと言い当てられた。
情報によれば心理を学んでいると聞いたがそれにしてもすごい。
あのシャーロックが心を惹かれている理由が何となく分かった気がした。
それでも彼女が持つ知識は自分やシャーロックの半分にも満たない。所詮、馬鹿の一人だ。
しかしそんな馬鹿は役に立つ。
シャーロックがゲームに参加してくれる材料――言わばチケット。しかし気づかないというのはあまりにも馬鹿だ。
シャーロックが一人の女性に執着するのは有り得ないことだが実際、彼はアリスに興味を抱いているのだと思う。
純粋に犯罪を解くためなのか、否かは定かではないが。そういうのに疎いシャーロックは鈍感で馬鹿なだけ。
なんだ、僕より馬鹿じゃないか。モリアーティは歪んだ笑みを再び浮かべた。

「成る程、さすが姫なだけ美人」

アリスの頬を撫でてクックッと笑った。たとえるならエンジェル。天使。
しかしこの女一人ではゲームができない。イコール退屈。
このゲームはほんの一部の始まりに過ぎない。
シャーロックにもっともっとアリス・ブラックフォードへ惹かれてもらい、そして最高のゲームにする。
今までで最も楽しくて最高なゲームに。
しかし今回はそのゲームのために我慢をしなくてはいけない。モリアーティには辛いことだった。
自分の脳を最大限に使えない上に分かりやすくシンプルにしなくてはいけない。

「辛い、辛いね」

さあ、ゲームを始めよう。とっても簡単でシンプルな。

「僕を楽しませてくれ、シャーロック」

でなきゃ、彼女は死ぬ。
そして次のゲームで君は堕ちていくのだ。どこまでも真っ暗な闇に。

「僕をがっかりさせないでくれ。でなきゃ…」

君の天使をもらっていくよ



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