2nd homicide


昨日、事件があったとは思えないほど気持ちの良い朝だった。
コーヒーの入ったマグカップに口をつける。
ジョンは新聞にサッと目を通しながら朝食をとるシャーロックを眺めた。

「興味を惹いた事件は?」

彼は顔を上げてハッキリと「ない」と答えた。
誰かの携帯が鳴っていることに気づき、ジョンが反応をするとシャーロックに手で制された。
どうやら彼の携帯が鳴っているらしい。
シャーロックは画面を眺めそれから「やった」と口元を吊り上げた。
ワクワクした様子の彼へ怪訝に視線を遣るが彼は片目を瞑ってみせるだけだ。
落ち着きを払ってからシャーロックは素早く応答した。

「僕だ。…分かった、すぐ向かう」

先ほどと打って変わって表情をさらに引き締めるシャーロックに何かあったと感じてジョンはすぐさま口を開いた。

「何だって?」

携帯を切ったシャーロックにそう聞けば彼は立ち上がり無言で出かける準備を始めた。
慌ててジョンもコートを着て身支度をする。
そんな彼にシャーロックは一言。

「また殺人だ」

*

パトカーが何台も止まるマンションの前へとやって来た。
マンションの前にアリスが立っていた。
昨日よりも青ざめた顔なのに気づき、ジョンは歩きながらシャーロックに小声で話し掛けた。

「シャーロック。彼女…グレイさん、顔色がとても悪いみたいだ」

「ああ、見て分かる」

「今度は誰が殺されたんだ?」

「ショーン・グレイの恋人ミッシェル・コーツ」

「Mr.ホームズ」

アリスは歩いてくるシャーロックとジョンに気づき、震えた声でそう呼んだ。
昨日と打って変わって表情に強張りが見えた。
連日続く殺人に流石に参っているのだろう。
こうも身内は次々殺されては流石に精神状態も揺らぐ。

「大丈夫か?何だか顔色が優れないみたいだ」

ジョンはあまりの顔色の悪さについそう問いかけていた。
曖昧にアリスは口元を吊り上げて無理やり笑顔を作ったように微笑むと「私なら何とか…」と答えた。

「わざわざ電話をどうも」

シャーロックの言葉で先ほどの電話の相手が彼女なのだと分かった。
アリスは「いいのよ」と髪を乱暴に掻き上げ口を開いて続けた。

「何時の間に登録してあったから。私が寝ている間に弄ったのね」

ジョンは咳払いをしてシャーロックの横腹に肘をぶつけた。
シャーロックはジョンを一瞥し、口を開いた。

「こうなった以上、君に喋ってもらわないとまた殺人が起こる可能性がある」

アリスは考え込むような素振りを見せ、やがて視線を上げて頷いた。

「そうね…話すわ」

彼女の力強い双眸を見て、シャーロックが意図的に“再び殺人が起こる”ようなことを
匂わせてアリスを煽ったことに気づいた。
正義感が強くて他人が傷つくのに耐えられない性格なのだ、彼女は。





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