Book Of Memories

London

陽光が僅かに差し込む煉瓦の道。
ベーカー街には一台のトラックが停車していた。引越し用のトラック。
そこに積まれていく家具やダンボール。比較的少ない方ではないだろうか、自分の荷物は。
アリスは最後の荷物が積まれたのを確認し「ありがとう」と業者の男たちに向かって微笑んだ。男たちは頭を軽く下げ、トラックへと乗り込んだ。
走り去っていくトラックを見届け、見上げる。こことは、もうさようならだ。二度と会うことなんてないだろう。
ジョンとシャーロックには内緒でここを出る。新居の先も伝えていない。
いつもより少し重たい手荷物を肩にかけ、アリスはそっとその場を離れた。

「さようなら、シャーロック、ジョン」

未練を断ち切るようにタクシーに乗り込み、振り返らずに運転手に行き先と住所を告げ、目を閉じる。
自分の冒険は終わった。最初にして最後の、旅は。
そしてこれからは新しい平凡な道を歩んでいくつもりだ。大好きな本たちと一緒に。
その前に自分も何か書いてみよう。不思議で非凡でデンジャラスな探偵たちとの物語を。





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