Lie


「まるで監禁」

シャーロックの許可を得て出て行った彼女を見送りジョンはそう零した。

「そうだな。出来ることなら監禁したいがこっちもアクションを取らないと向こうも動かない。何て頭が良い組織なんだ」

「え、シャーロック今、監禁したいって」

「ジョン、アリスは今嘘をついた」

ジョンの言葉をスルーしてシャーロックはそう言った。
しかし重要なことをシャーロックは言ったのでそっちに気が取られる。
嘘だって――?なぜわざわざ。

「彼女がわざわざ嘘を?」

眉をひそめるとシャーロックは体を起こして部屋の中を行ったり来たりし始めた。

「アリスがわざわざ嘘をついてまで部屋に戻りたかった理由…外に出るためか」

二人は互いに見合わせ、次の瞬間勢いよく廊下に飛び出して向かい側の部屋のドアをノックした。
応答はない。シャーロックはあらかじめ作っておいた鍵を取り出して鍵穴に差し込み開錠した。
部屋はもぬけの殻。唯一キャリーバッグだけがテーブルの上に置かれていた。
しかし簡単なハンドバッグだけがない。やはり外出してしまったようだ。
シャーロックは悪態をついてゴミ箱を蹴飛ばした。

「何てことだ、ジョン!」

「え、どうしたっていうんだ」

「あの時点で気づくべきだった…!アリスはいつもソファーで寝ていた。それが今日に限って僕のベッドの上…!
君が覗いて慌てて彼女がそこへ寝るフリしていたのは明白だったのになぜ僕は気づけなかったんだ、反応が鈍い。鈍すぎる!」

早口でそう嘆き、シャーロックは顔を歪めて行ったり来たりを繰り返した。
とにかく彼女の命が危ないかもしれないのだ。
ジョンは宥めようと口を開いたがシャーロックはそれよりも早く静まり、無言で顔を顰めたままどこか一角を凝視している。
思考しているのだ。すぐにわかった。注意深くシャーロックを見守る。






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