Is this a travel?
結局何の収穫もないまま閉館時間を迎えた。
閉館時間は夕方頃だった。
迷惑そうな顔をした従業員に追い出され、三人はホテルへと向かう。
夕陽のオレンジが眩しい。
「お腹ペコペコだ。夕飯はバイキングだろ?」
「いいや。安全性を考えてルームサービスを頼んで僕とジョンの部屋で三人で食べる」
「バイキングが良かった」
「旅行じゃないんだ、ジョン」
「でも最初に貴方は旅行って言ったわ」
シャーロックの言葉にアリスは悪戯っぽくそう言った。
確かシャーロックは朝二人を起こしてキャリーバックを取り出し「旅行だ」なんて言っていた気がする。
シャーロックは隣で歩くアリスを見下ろし手を繋ぎ直しながら肩を竦めた。
「やられた」
ホテルに着くとすぐにチェックインし、ジョンとシャーロックの部屋にディナーが運び込まれた。
事件のことについては何も話さなかった。
シャーロック曰く食べるときでは頭が鈍るらしく思考しないことに決めているとのこと。
夜のリヴァプールはとても幻想的でいて綺麗だった。さすがはリヴァプール。
ホテルも最上階の部屋を取ったからか見晴らしがこれ以上にないくらい綺麗だ。
生まれて初めて見る夜景に感動すら覚える。
アリスは窓辺に椅子を寄せて景色を見下ろしながら食事をとっていた。
「アリス、ジョン。明日はデアズベリー村へ行く」
「デアズベリー村?」
「確か教会…が有名だったかしら」
「そう。今日は調べてばかりいたが明日はかなり歩く上、人から話を聞く。時に演技が必要になるかもしれないからその時は臨機応変に」
「分かった」
「分かったわ」
「楽しくなってきた」
本当に楽しそうに言うシャーロックに向かってジョンも笑みを零す。
「僕も…あ。アリスそういう意味じゃなくて」
アリスはクスクス笑った。
「分かるわ。私もすごく楽しいもの」
「女性でそう言ったのは君が初めてだ」
シャーロックは短く笑ってそう言った。
「あら?いけないの?」
「いいや、嫌いじゃない」
心地よく鼓動する心臓。
アリスは口元を綻ばせ微笑んだ。