To Liverpool


――バン!

叩きつけられる音にジョンとアリスは体を硬直させて何事かとそちらへ視線を向けた。
床に用意された3つの大きめなキャリーバック。
それを見下ろすシャーロックは不意にこちらへ視線を遣り口元を吊り上げた。

「二人とも、旅行だ」

「「え」」

*

よく分からないままにキャリーバックに5日分くらいの洋服や歯ブラシなど生活用品を入れさせられ、それを抱えて車に乗せられた。
ジョンの方も分からないままにシャーロックに従ってタクシーに乗っている。
外はまだ少し薄暗い。アリスは欠伸を噛み殺した。

「…行き先は?」

ようやくジョンはそう聞いた。
シャーロックはタクシーの運転手にユーストン駅と言っていた。
鉄道を用いて一体、どこに行くのかジョンもアリスもさっぱり分からなかった。

「…リヴァプール」

頬杖をつきアリスの隣に座ったシャーロックは素っ気なくそう答えた。
向かい側に座るジョンはシャーロックと目を合わせ、眉を寄せた。

「何だって?」

「何度も言わせないでくれ」

「リヴァプールへ何しに行くの?」

リヴァプールは港町だ。
世界遺産にも指定されているほど、美しく発展した街である。
アリスは足を運んだことがなかった。

「そこに君の秘密が眠っている」

「ミッシェル・コーツのことを調べたらリヴァプールが出てきたというのか?」

「ああ。履歴書は改ざんされていたが電話帳のページのほとんどがリヴァプールの住所だった」

「そこが…組織の拠点?」

アリスはすっかり眠気が醒めたようでシャーロックにそう聞いていた。

「ああ、全く不思議なことではない。あそこは夜になると治安が悪い。それこそ表沙汰にはなっていない事件が多い。
ついこの間新聞に載っていたリヴァプールの失踪者は間違いなく暗殺されたよ」

ジョンとアリスは視線を合わせ、首を横に振った。
そんな二人を一瞥しシャーロックはアリスへ顔を向けた。

「…いいか?アリス、あそこは敵が多く潜んでいる。君は僕かジョンから離れて単独行動は取るな」

「…ええ、わかったわ」

重々しく頷き、アリスはそう返した。
最近何もなかったが用心に越したことはない。
ここはシャーロックの指示に従うべきだろう。




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