New year


「手当しにきたよ」

ジョンは救急箱を持って共同スペースに入ってきた。
濡れたハンカチで頬を押さえながらアリスは苦く笑った。
アリスの傍に座りジョンは救急箱を広げ始めた。
自分も殴られたがハドソン夫人も手荒な扱いを受けたはずだ。

「ハドソンさんの方は?」

「完了してる。ハドソンさんが侵入してきたアメリカ人に怒ってたよ。アリスの綺麗な顔に傷をつけて!って」

「最近殴られることが多いわ。殴りたくなる顔なのかしら?私って」

悪戯っぽくそう言い自身の頬に手を添えるアリスにジョンは首を横に振った。
それはないよ、と付け足して。

「僕の方が殴りたくなる顔みたいだよ」

シャーロックはそう言いながらドカっと少し乱暴に肘掛け椅子に腰を下ろした。

「僕はそれには同意するね」

「実際、殴ったじゃない」

「あれはシャーロックの指示だ」

「でもたまに殴りたくなるときがある?」

確信めいた風に彼女が言えばジョンは肩を竦めて「ああ、そうだね」と返した。

「それで、今はどこにあるの?」

「何の話?」

「カメラフォンだよ、ジョン。誰にも分からないところだ」

「とにかく、あの携帯には写真だけが入っているわけじゃないんだな」

「そういうこと」

「そして、彼女は生きている。どう考えればいい?」

そのとき鐘が鳴った。

「ハッピー・ニューイヤー、ジョン、アリス」

シャーロックの言葉にアリスはハッと顔を上げた。
すっかり忘れていた。

「もしかして忘れてた?」

「うん、仕事行ってないと日付忘れるみたい」

日付のスタンプを押していた毎日が懐かしい。
アリスは遠くを見据え、目を閉じた。
その横顔を眺めているシャーロックには気づかなかった。





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