Impossible to prove


あれから帰ってすぐにアリスはシャワーを浴びて自室のベッドに入った。
シャーロックはまだ目が覚めていないらしいが大事には至ってないから心配ないとジョンが話していた。
アイリーンの家へレストレード警部がやって来たときはとても驚かれた。
アリスがシャーロックとジョンと行動を共にしていると知り、酷く驚き奇妙な物を見るような目でこちらを見てきた。
寝返りをうち、アリスは目を開けてため息をついた。
何だか胸の中がモヤモヤする。正体の分からない胸の詰りに額に皺を寄せた。
アイリーン・アドラー。
賢くて女性のアリスでもため息が出るほど綺麗で。そしてなぜか自分をお嬢さんと子ども扱い。

「今晩は、お嬢さん」

艶っぽい声にアリスはガバっと体を起こした。
アイリーンがすぐ傍に立っていた。
困惑しながらアリスは体勢を直してベッドに座った。

「まあ、可愛らしいネグリジェ」

アリスが着ているのは白のシンプルなタイプだった。
剥き出しの肩へアイリーンは視線を遣り唇の端を吊り上げた。
刺青のような焼印にアイリーンはそっと触れる。アリスはすぐに近くにあったショールを巻きつけて隠した。

「そんな格好でいると狼さんに襲われるわよ、お嬢さん」

「私、赤ずきんじゃないです」

そう返せばアイリーンは面白そうに笑った。

「何しに来たんです?」

ムッとしながらそう聞けば彼女は片眉を吊り上げてやはり微笑んだ。

「シャーロック・ホームズさんにコートを返しにきただけよ」

「ついでにここへ寄ったわけね」

「ええ、悪いかしら?…可愛らしい美味しそうなお嬢さんとお話がしたくて」

「私は雛鳥なんでしょう?面白い話なんて持ってないわ」

「訂正するわ。籠の中の綺麗な小鳥さんね、貴方は」

アリスはいい加減にして、と口を開こうとしたがドアを叩く音によって閉ざされた。

「アリス?」

ジョンだ。
アリスはアイリーンへ行け、と顎で示し彼女が出て行ったのを確認してから扉を開けた。
目を丸くしたジョンと視線が合う。

「どうしたの?」

「シャーロックが目を覚ましたことを伝えようと思って…寝るところだったかな」

困ったように下げられる眉。
アリスはぎこちなく微笑んで口を開いた。

「ううん、平気。全然、寝られなかったから」

「大丈夫か?」

「ええ、平気よ」

「そうじゃなくて」

「え?」戸惑うようにジョンを見れば、何だか難しい顔をしていた。

「アイリーン・アドラーの家から帰ってくるまでの間、何だか…ずっと様子が変だから」

「平気よ…」

胸の中の僅かな動揺を押し隠し、アリスは視線を逸らした。

「少し気分が優れないだけ。もう寝るわ」

「そうか、悪かったな。おやすみ」

「おやすみ」

扉をゆっくりと閉め、アリスはベッドへ倒れこむように寝そべった。




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