client


「シャーロック?」

「場所の検討はおおよそついていたがまさか君がいるなんてな」

「何て格好を…」

シャーロックは見るからに裸。シーツを体の上に羽織った状態だが。
とても刺激の強い格好であることに変わりはない。
彼は鼻を鳴らし「気にするな」と隣に座った。

「事件は?」

「解決はしていないがもう真相にはたどり着いたよ。つまらん事件だった」

「暇つぶしにはなるかな、って思ったんだけど」

「試しにアリス、解いてみるといい」

「え…うーん…、犯人はいない!つまり殺人じゃなかったのよ」

思い切って言えばシャーロックは「おー」と芝居がかった感じで目を丸くさせた。
ということはこの線で合っているということになる。
アリスは事件のことを詳しく聞いていなかった。
情報不足だ。しかし少ない情報で頭を巡らせる。

「ダメよ、ギブアップ…情報不足だわ」

「仕方ない、ヒントをやろう」

シャーロックはこちらを向いて不敵に笑った。
ヒントという言葉が何となく気に入らない。
ムッと顔を歪めてアリスは口を開いた。

「ヒントは嫌。欲しいのは情報よ」

シャーロックは開こうとした口を閉ざした。どこか一角を見つめている。自分の背後を。
新たな気配にアリスは振り返った。目を丸くしたジョンと目が合う。

「ジョン」

「アリス…?何で君が」

「アリスさん」

名前を呼ばれ、アリスは首を傾げて立ち上がった。
シャーロックに視線で行けと命じられるのが分かりアリスはジョンと目配せしてそこを後にした。
男に着いていくとどこかの部屋に押し込まれた。部屋には使用人のような女性が4人立っていた。
女性ものの衣装がたくさん置いてある。
見るからに高級そうな。
アリスの持つ服はどれもある程度は高く良いものばかりだったがそれらとは比べ物にならないだろう。

「アリス様、それでは衣装を選びましょう」

「え、いや…あの聞いてないんですけど」

その言葉をスルーされ使用人たちは勝手に衣装を手に取りアリスの体の上に宛てがって色合いを見始めた。
一体、何が目的だ。
アリスは戸惑うようにマネキンになって立ち尽くすしかなかった。
結果、ワンピースに着てきたコートを着せられただけだった。
腰より上の位置に黒のリボン、リボンから下は控えめな淡いブルーで上は黒。
スカート丈の長さは6,7分くらい。靴は黒のパンプス。

「依頼主が会いたいと仰るので」

「はい?」

依頼主――?シャーロックの依頼主か。
となるとマイクロフトは事件のためにシャーロックを呼んだということになる。
確かに自分はついで、だ。

「何で私に?」

「貴方がお好みの女性だから、と」





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -