Bomb choice


モリアーティが出て行くとシャーロックはジョンに指示を出した。

「地面に転がった男二人を縛っておいてくれ」

「わかった」

シャーロックはアリスへと近づいた。
そして至近距離で彼女の腕の傷が目に入り、アリスの腕を手に取った。

「ルールをあの男が破ったの」

腕の傷が一本多いことに気づいたシャーロックにアリスは眉根を下げてそう言った。
アリスは痛みを感じながら唇を吊り上げる。

「平気…だからいつもの頭脳でさっさと馬鹿げたゲームを解いてモリアーティを追うのよ」

「分かってる」

シャーロックは微笑み、テーブルに何時の間に用意された工具箱を探った。
そこからプラスドライバーを取り出す。
それを片手にアリスの腰辺りに固定された機械のネジを外し始める。
4本全てネジを取り外すと慎重に蓋を開けた。想像通り様々な色のコードがあり、6本の束となっている。
男二人を縛り終えたジョンはそれを覗き込み分かりやすく顔を顰めた。
しかし何も言わないジョンは何か言ってシャーロックの邪魔になることが分かっているのだろう。
ジョンが完全にシャーロックを信頼していることが分かる。
シャーロックがペンチを取り出し、束を切断し始めた。
その度に体を固くさせるアリスの手をジョンがそっと握る。
これを失敗すれば3人を待っているのは確実な死だ。3人の間には緊張感が漂っている。
制限時間は3分を切った。
アリスとジョンの顔には焦りの色が浮かび始める。

「ジョン、警察を呼ぶ準備を始めてくれ」

「あ、ああ…大丈夫なのか」

「もうすぐ解除できる」

ジョンは携帯を操作し室内を後にした。
それを不安そうに視線で追うアリスは黙々と作業を続けるシャーロックの頭に視線を落とす。

「本当に解除できる?」

「さっき君が僕のいつもの頭脳で馬鹿げたゲームを解けって言った。だから…大丈夫だ」

シャーロックは自身で言った言葉の意味が分からなかった。
眉を寄せながら自分の口から言った言葉を脳から追い出して全神経を爆弾解除へと集中させた。
ジョンが室内に戻ってくる。

「よし出来た」

シャーロックはそう言ったがタイムは止まらず30秒を切った。
一瞬笑顔を浮かべたアリスとジョンは動揺を隠せなかった。

「シャーロック…爆弾の制限時間が止まってない…」

「作業は全て終えたはず…なのになぜ止まらない…?」

シャーロックも動揺を隠せないようだった。

「二人とも…逃げて」

アリスの死を覚悟したような表情にジョンは息を呑んだ。
閉じた瞼からは涙が伝う。
だがジョンとシャーロックはその場を動かなかった。
シャーロックは何か落ち度はないか、と機械は探っている。
しかし何も出てこない。自分に落ち度はないはず。

「なぜだ…ヤツは解けない問題は出さないはずだ」

「じゃあ、きっとこれはヤツの悪戯だ…僕たちは死なない」

そう言うジョンの声は微かに震えていた。

「10秒切ったわ…」

刻々と数字がゼロに近づいている。
8、7、6、5、4、3、2…





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