The 2nd game
タイミングを計ったように室内にシャーロックとジョンがやって来た。
彼らの顔を見てとてつもない安心感に襲われる。
息を弾ませたジョンは銃を構えた。
それを見てモリアーティは口元を吊り上げて朗らかに声を掛ける。
「やあ、久しぶりだね」
シャーロック、とその名を呼ぶ彼の口調は恍惚としていた。
ジョンが一歩踏み出すのを見て「おっと」とモリアーティはおどけたように声を上げた。
それによりジョンの動きは止まった。
「僕を捕まえる暇なんて君たちには与えられてないよ」
シャーロックが片眉を吊り上げる。
「どういう意味だ?」
「アリス・グレイの命か…」
モリアーティはアリスの顎を掴み、シャーロックとジョンに向かって挑戦的な笑みを浮かべた。
「僕の逮捕か」
どっちを選ぶ、と囁くように言ったモリアーティはアリスの鎖を一気に解いた。
鎖から解放されホッと体の力を抜いたアリスだったが次の瞬間、目を見張る。
体にはまだ赤いデジタルの数字が浮かび上がった重々しい機械があった。
様々な色の細いコードが複雑に絡まり合い、見るからに危険なそれは爆弾だった。
銃を持ち上げるジョンに向かってモリアーティは絶望的な言葉を吐いた。
「ちなみにこの爆弾、僕の鼓動が止まると時間制限関係なく強制作動するようになっている。それでもジョン…僕を撃つか?」
ジョンは無言で銃を下した。
その顔は悔しげに歪んでいる。
それを満足そうに見つめ、モリアーティは目を細めた。
「さあ、第2のゲームの始まりだ」
モリアーティは高らかにそう言うと靴音を響かせて工場を後にした。
それでもこのゲームはつまらないというあの男が恐ろしかった。