Clown's smile


ベーカー街からグロースター州チェルトナム村までは三時間くらいは掛かった。
車が丘を越えて小さな村の宿の駐車場に着くとシャーロックは降りて宿へと入っていく。
ジョンはその後を追いながら湿った地面に足を取られないように注意した。
そっと腕時計に視線を落とす。6回ほどアリスは罰を与えられているはずだ。
腕に抱える唯一の通信手段であるパソコンに視線を落とし、フロントの女性に話しかけるシャーロックに近づいた。

「ええ、確かです。白いバンが通りました。ここの村は誰かが入ってくれば
すごく目立ちますから…他の方に聞かれてもそう答えるかと思いますわ」

「ありがとう…ジョン、行くぞ」

宿から出て行くシャーロックの背中を首を傾げてフロントの女性が怪訝そうに見つめた。
その女性に会釈をしながらジョンは後を追って車のキーを差し込んで、エンジンをかけた。

「適当に他の村人に聞くか?」

いや、とシャーロックはシートベルトを閉めながら否定した。
ギアを入れて車を出す準備をする。

「もう場所に検討はついてる。急いでくれ」

「分かったよ」

前を見据えたままのシャーロックにジョンはすぐにそう答えてアクセルを踏み込んだ。

*

アリスの頬に透明な雫が伝った。
腕には7本の傷があるはずだがレーンがルールを無視したせいで8本あった。
テリーはコンクリートの地面に力なく横たわっている。
ルールを無視したレーンを止めようとテリーはしたが体格の良いレーンはすぐにテリーを失神させた。
テーブルに置かれた液晶画面は真っ暗で誰も映っていない。

「ルールを無視するなんて…最低…」

服をまさぐり出すレーンを睨み上げれば彼は「うるせぇ」と言った。

「くそ…鎖が邪魔で脱がせねぇ…」

隙を見て逃げるか。そんなことを考えながら大きな体の男を睨み上げる。
突如、レーンは声を上げて地面に転がった。
アリスは視線を上げて目を見張った。
笑顔を浮かべることなく別の男を冷ややかに見据える。

「ジム・モリアーティ…」

スーツの男は口元を吊り上げた。

「憶えてくれてたんだね、お姫様」

「主犯のくせに仲間を殴ってどういうつもり?」

モリアーティは肩を竦めて地面に転がったレーンを踏んだ。
そして嫌悪に歪んだ見下すような歪んだ笑みをニッコリ浮かべた。

「この僕がこいつ等と仲間?」

可笑しそうにモリアーティは肩を揺らした。
アリスは眉を寄せ、「何がおかしいの?」と言った。

「ああ…これは失礼。ゲームのルールを守らないような愚かな人間の屑が僕の仲間?」

馬鹿馬鹿しい、と吐き捨てたモリアーティはレーンの背中をさらに強く踏みつけた。

「まあ、いい。君は幸運だ。もうすぐシャーロックが来るよ」

「つまらないゲームだったわね」

「奇遇だな。僕もそう思うよ」

肩を竦めるモリアーティを怪訝に見つめる。
この男は何を企んでいるのか。





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