prisoner


チャラ…

鎖の音が聞こえる。
それは過去に聞いたことのある冷たく無機質な音だった。
ぼんやりとする視界が次第にハッキリとしてきた。
そこは薄暗い部屋だった。
蝋燭の灯りで辛うじて辺りが見えるくらいの暗さ。
コンクリートの床、目の前には長いテーブルがあり真っ赤なテーブルクロスが掛けられている。
そのテーブルの上にモニターのような液晶画面が置かれていた。
洋風な城の中のダイニングルームような室内。しかしそれにしては少し殺風景だった。
アリスは手を動かそうとして拘束されていることに気づいた。
唇の端にピリッと痛みが走る。誰かに殴られたようだ。
アリスはジム・モリアーティという男のことを思い出した。
シャーロックの知り合い。会って思ったがあまり良い関係ではなさそう。
誰かが入って来た。男二人。
何やら会話をしている様子だった。

「あれほど、女を殴るなと言っただろうがレーン」

細身のそばかすだらけの男は言った。
鋭い爬虫類のような目に分厚い唇。
レーンと呼ばれた男はまさに見た目が体育会系の男でがっしりとした体つきだった。
ニヤッと口元を吊り上げ、レーンは口を開いた。

「テリーそういうなよ。俺の性癖を知ってるだろ?あの女、結構綺麗なんだよ」

細身の男はテリーというらしい。
どちらにしてもこの男二人はそれほど賢くない人格に見える。
賢い男を知っているからだろうか。
アリスの中で一人の男が浮かんだ。しかしそれと同時に胸が酷く痛んだ。

「それを抑えろって言っているんだよ。ヤツに言われただろ。女は喘息持ち。絶対に殺すなって」

「レーン、女が起きたみたいだ」

テリーがこちらを見てそう言った。
二人はこちらへと近寄ってくる。鎖は頑丈で解けない。
ガシャガシャと音を立てて解こうとしたがレーンはアリスの頬に平手打ちをした。

「レーン!」

非難するようなテリーの口調にレーンは不満そうに手を下した。
そしてテリーは時計を確認して「時間だ」とモニターを操作した。
画面に見慣れた男二人の姿があった。




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