Sniping offense


アリスはお気に入りのコートのポケットに冷えた指先を突っ込んだ。
自身のヒールの音を聞きながらアリスはぼんやりと前を見据えながら歩いていた。
携帯に何件もの着信が入っているがとても出る気にはなれない。
ここのところ心も体も休まっていない。
米神の辺りを解すように片手で押さえ、白のマフラーに鼻柱を埋めた。

「アリスくんではないか!」

「フレイン教授?」

向こうからやって来る笑顔の優しい男にアリスは顔を輝かせた。
両手を広げてやって来る教授にアリスは駆け足で近づく。
体が触れる――そのとき――

パァン!

「教、授…?」

鮮血が腹部辺りから迸り、アリスの顔を濡らした。
温かい濡れた何かが顔についた感触にアリスは自身の頬の辺りに触れた。
ガクン、と膝から崩れ落ちるようにフレイン教授は地面に倒れこむ。
アリスはその場に座り込んだ。
呆然と血の広がっていく光景を見つめる。

「は…っ」

呼吸が震えて吐き出された。
周りが集まり、救急車のサイレンの音が遠くから聞こえる。
アリスは震えながら立ち上がった。
ふらっと後方に体が倒れこみ、バランスを取ろうにも力が上手く入らない。
周囲の雑踏が聞こえなくなる。ああ、それくらいショックを受けているのかも。
アリスは咄嗟にiPhoneを取り出して電話帳を開いて画面をタップした。
頭に浮かんだのはあの探偵の顔と名前。
iPhoneを操作する前に何者かによって阻止される。
驚いて顔を上げればそれは自分が望んでいた人物で。

「教授が…」

「落ち着け」

低い声にアリスは酷く安心した。

「シャーロック…フレイン教授が…」

彼の服を掴み、懇願するようにキュッと眉根を下げて見上げる。
彼の手が自分の肩に添えられる。
その温かさにまた酷く安心している自分がいた。

「大丈夫だ」

そう言われ、大丈夫な気がした。




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