思いがけない再会


「っ…嫌…」

男が悪臭を漂わせてユウキへと飛びかかってきた。
掴もうとしてくる両手を押え込む。噛み付こうとする男を直視できない。
至近距離で見る男の顔は最早人間ではなかった。
白濁した、皮膚の腐った男は「ぐぁああ…」と漏らし血肉を求めて口を開く。

「ユウキ…!」

大きな衝撃が体に走る。体が道路に投げ出された。
体に覆い被さってきた男を反射的に押し退ける。
意外にも男は簡単に道路へ転がった。レオンが男を射殺したようだ。
レオンがすかさずユウキの手首を掴み引っ張り上げて立たせる。

「怪我は?」

「平気っ…あたしは大丈夫です」

恐怖で落ち着かない心臓。
自然と上がる息を落ち着けようとするが上がるばかりである。
女性の悲鳴のような叫びが聞こえ、ユウキは反射的にレオンの服の裾を掴んでいた。
それを見遣り、レオンは安心させるように笑みを浮かべ「大丈夫だ、俺がついてる」と頭を撫でた。

「女性を…助けなきゃ」

「ああ、わかってる。行こう」

カチャリとスライドを引いて射撃の準備をするレオンの背中に着いていく。
そこはよくある飲食店だった。

「伏せろ!」

赤い服を着た女性はすかさず屈んだ。
レオンはすぐに発砲した。銃弾はゾンビの額を貫き、完全に脳髄を破壊した。

「大丈夫か?」

「ええ、ありがとう」

聞き覚えのある声にユウキはハッと顔を上げて女性の顔を見つめた。
クレアだ…!間違いない、彼女だ。
馴染みのある顔を見て安堵し、抱きついた。

「クレア…!」

抱きとめてくれた彼女は驚きに体を固くさせ、そしてすぐに抱き返してくれた。

「ユウキ…!ユウキなの?」

両頬に手を添えられ、無邪気な笑顔を浮かべる。

「うん!クレア、会いたかった」

「丁度よかった。私、ユウキのこと探してたの」

「私のこと?」

「ええ。あと兄さんのことも」

クリス。ユウキはすぐに顔を伏せた。
彼が今どこで何をしているのか。

「連絡が途切れちゃって。ユウキ、兄さんのこと何かわからない?」

ユウキは力なく首を横に振った。
「そっか」と残念そうに呟くクレアを見て申し訳ない気持ちになる。
あの日、訪ねてきたクリスの顔はどこか寂しげで、不安そうで、そして何かを決意したような顔だった。
そんなクリスに何かあったことは明らかなのに。最後に会ったその日を境にクリスは消息を絶った。
職場へ訪ねても署長は迷惑そうに「出て行け」と言うだけだった。

「Hey,"Girls"。お取り込み中申し訳ないがここにずっとはいられない」

クレアはようやくレオンへ顔を向けた。
確かにレオンの言う通りだ。下手に一つの部屋にとどまっていれば命を落としかねない。
さっさと警察署へ移動した方が良さそうだ。

「私とこの子を助けてくれてありがとう。私はクレア」

クレアの手がユウキの頭に乗せられる。

「レオンだ、ひとまずよろしくだな」

「ええ、一緒に協力してこの街を出ましょう」

力強く握手を交わす二人。
安堵に息をそっとつく。こんなに心強いことなんてない。








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