全速力で駆け抜ける、dash、dash、run


キュッと目を閉じて死を覚悟する。
本当はもっと色々なことがしたかった。もっと生きたかった。
クリス。心の中でユウキにとってのヒーローの名前を呼ぶ。

(クリス…!助けてっ…)

パァン

乾いた音がした。発砲音だ。
火薬の微かな匂いがする。クリスだ。
きっと彼が来てくれたのだ。期待を持ってユウキは目を開けた。
気配が近づき、ユウキの肩を掴む。微かに香るシトラス。
男だ、顔を見る間もなく肩を引き寄せられる。戸惑い口を開く前に男は口を開いた。

「逃げるぞ」

「え」

返事を聞く前に男は遠慮なくユウキの手首を掴み駆け出した。
猛ダッシュに転倒しそうになる。
走り出してようやく男の背中へ視線を向けた。

(警察官…?)

警察官の制服を着た男。
しばらく走り、男は立ち止まった。そして頭を動かしこちらを振り返る気配。
視線を感じ眉を寄せた。呼吸を落ち着かせ、ユウキは視線を上げる。
端正な顔立ちの男だった。いい感じの男。ジェニファーが傍にいればイケメンと騒いでいたに違いない。

「この街で何が起こっているか君はわかるか?」

急な質問にユウキは戸惑うように眉根を下げた。
男は困ったように笑い「ああ…」と口を開く。

「俺はレオン、レオン・ケネディ。ラクーン署の警察官だ」

「…あたしはユウキ・ブラック。ラクーン大学法学部の生徒です」

「大学生か…」

こくんと頷き、「あの」と口を開く。
レオンと名乗った男を見上げれば彼は「歩きながら」と言って歩き出してから促した。

「助けてくれてありがとう。あのレオンは知ってるのですか、この街に何が起こっているのか」

「いや、知らないんだ。慌てて車を出せばこの様さ」

「これからあたしは警察署へ向かいますが貴方は?」

期待を込めて彼の横顔を見上げる。
レオンは厳しげに顔を歪め、一つ頷いた。

「ああ、俺も丁度向かってるところなんだ、一緒に行こう」

途端に安堵した。
その反動で涙が溢れそうになったが唇を噛んでグッと堪える。
今は泣いている場合ではない。
ジェニファーを見つけ、一緒にこの街を出るのだ。
片手をするりと掴まれ、驚いているとレオンは前を見据えたまま「走るぞ」と言った。
唸り声を上げながらこちらへ向かってくるゾンビの群れ。
肝が冷えていく感覚。躊躇っている時間はなくユウキはレオンと共に走り出すのだった。








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