どこかの海に落とした永遠


ヨーロッパの土地を踏んで間もなくユウキは手配された車を走らせ、目的としている村へと向かった。
途中で入った報告によると先ほど地元の警察官2人が何者かによって襲撃を受け、死亡したらしい。エージェントは発砲許可を受け、村へと侵入したらしい。
自分も早く追わなければいけない。アクセルペダルを一気に踏み込み、速度を上げる。
AT車を手配するとは女の自分を馬鹿にしているのだろうか。舌打ちをし、減速することなくカーブを曲がる。
霧が深くなってきた。まるでホラー映画の幕開けだ。ようやく一軒の家が見えてきた。その手前で停車し、降り立った。ここが村の入り口らしい。
こっちにも発砲許可は下りている。ジャケットの中からハンドガン(ベレッタM92)を取り出し、構えの姿勢で家のドアに手をかけた。気配はない。
一気に侵入し、気配も殺意も感じられないが念のため、警戒姿勢を崩さずに中へと進んだ。
リビングスペースだろうか。すぐに男の死体を発見した。額を撃ち抜かれ、息絶えている。例のエージェントの仕業だろう。しかし男は一見、一般人に見えるが。
ユウキはスッと立ち上がり、あまり広くないリビングスペースを見渡した。奥の暖炉はまだ少しばかり燃えている。よくよく近づけば、炎は消えそうだった。
腕時計に視線を落とした。銃使用の報告を受けてからそこまで時間は経過していない。

「……。」

背後から近づく気配を察知し、ユウキは素早く体を反転させて銃口をそちらへと向けた。
しかし誰もいない。気のせいだったらしい。

『ユウキ、報告を』

インカムから聞こえてきた声に応えるため、辺りに気を配りながら口を開いた。

「村の入り口に入りました。一軒の家で遺体を発見。同じエージェントが殺害したと思われます。遺体は男性。服装から村人と断定。
引き続き、調査を行いつつ、速やかに例のエージェントと合流し援助します」

『はい、了解。そのまま村の中心へ急いで』

「はい」

通信を終え、ユウキは中心へと急いだ。

*

通信を終えたサクラギはストローを口に咥えながら静かにモニターを眺めていた。
そこに映り込む例のエージェントの情報。本来ならばエージェントの情報を伝えなければいけない。
だがモニターに映り込んだエージェントの画像がそれを阻む。果たして言っていいものだろうか。
いや、何を迷う必要がある。私情を挟むなど愚かにもほどがある。

「何で上は今になってアイツをエージェントケネディに会わせるんだよ…」

何を望んでいるのだろうか。心を支え合っていた2人を引き離した理由は納得出来るものだった。
だとしても残酷としか思えなかった。あの事件の後、2人は確かに若かったが子どもではない。
もっと説明して距離を置くなどの処置をすればよかったのではないだろうか。何も完全に会ってはいけないなどと命令する必要もなかったのではないだろうか。








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