殺しに来るのはきみの影


「うん、お嬢様が誘拐されたのはわかった。エージェントを1人送り込んだのもわかった。それで後からなんで私が派遣されるわけ?」

シュッとネクタイを締め、ボタンを閉める。
そして画面を睨めば、そこに映り込んだサクラギが肩を竦め、『そのエージェントはアシュリー嬢と面識がないんだって。
そこで面識のあるエージェントブラックの登場。素晴らしいね』と悪びれた様子もなく言った。

『で、相変わらず真面目の堅物くんだなーお前』

「なにが?」

サングラスをかけた厳つい男たちに次と次と装備品を渡されながら、それを確認しつつ、素早く武装していく。

『大統領の娘に対面するからってスーツで行くって…』

「いいーの。うるさいよ、“お父さん”」

『ん?』

「何でもありません……」

ホルスターが外れないことを確認し、頷いた。合図を受けた1人の男と共に専用ジェット機へと乗り込む。
渡されたインカムを耳に差し込み、マイクを調整する。
バタン、という大きな音と共にドアが閉められ、運転手が乗り込む。軽く会釈をし、ジェット機は離陸した。
額の辺りを押さえながら情報を整理する。誘拐された対象は我が国の大統領令嬢、アシュリー・グラハム。大学帰りに奇襲を受け、誘拐されたという。
優秀な護衛がついていたはずだが、その防衛網も突破してしまうとは恐ろしいテロリストだ。
捜査情報によると対象者はヨーロッパ辺境の村に監禁されているかもしれないという。そしてそこでエージェントの1人が捜査しているらしい。
エージェント1人に任せるだなんて相当、政府から信頼されているのだろうか。

「あ、どうしよ。私、まったくあっちの言葉わからないや」

穏やかな海。穏やかすぎる海にユウキは不安に胸の辺りを押さえた。

「嫌な感じ……」









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