PROLOGUE
黄金色に揺らめき、伸びた地平線。夜が明ける。カモメの鳴き声が響いた。カモメもお目覚めのようだ。双眸を細め、欠伸を噛み殺した。
風が気持ちいい。ヘルメットの顎紐を緩めながらバイクから降りた。
スタンドをかけ、一気にヘルメットを脱いで潮風と朝一番の陽光を浴びようとしたところに不快な電子音。
手を止め、無視してやろうかと思ったがそうもいかない。後々面倒になるし、とある男からの落雷が何より恐ろしい。
溜息混じりでボタンを操作して「何」と応答する。不機嫌なトーンになっているのは隠さない。
『不機嫌になってるところごめんな。任務の時間だ、はい、起きて』
「起きてる。つーか私が今、何をしてどこにいるのか知ってる癖に」
ヘルメットを一気に脱ぎ、片耳を押さえながら恨めしそうに上空を見上げる。
『はいはい、怒ったら皺増えるよ。そのままヘルメット装着、乗車、エンジン始動して』
まるで子どもの相手をするように冷静なオペレーター。
彼の言葉通り、渋々、サッとブルーのボディを撫で、愛車に跨る。
『ルート、液晶に映ってる?』
チラッとナビに視線を落とせばしっかりと真っ赤に染まった一本ライン。
そのラインを辿れば、なぜかその地点は軍用基地。距離はそんなに離れていない。
「なに、私海外に飛ばされるの」
『ま、我慢してちょうだい』
クラッチ操作を行い、発進して、アクセルを一気に開ける。
通信は一方的に切れた。飛ばしながら標識をチラッと見遣る。そしてメーターを一瞥。軽く指定速度は超えた。
朝日を横目にユウキは先へと急いだ。