罪を重ねて原罪ミルフィイユ

ヤバい…。不安定なゴンドラの上、ユウキは登ってくるゾンビを1体撃ち落とした。
滲み出る汗を拭う暇もなく、スコープを覗き込み、次の標的を撃ち落とす。
ほんの少し余裕ができ、ユウキはライフル銃を下した。右肩に鈍い痛みがする。先ほど、ピアーズの目を片手で覆い、ゾンビを仕留めた際に負傷したのだ。
片手で銃を扱うにはまだまだ反動を抑える筋力が足りなかった。ユウキは弾を装填しながら下へと視線を落とした。
ユウキの乗るゴンドラに幼いピアーズが乗っている。何としても守らなければ。とはいえ、初めての実戦。

(心の準備してないのにいきなり実戦か…)

苦笑を零しつつ、再びスコープを覗き込む。1体、また1体と確実に仕留めていく。
もっと救える命もあったはずだ。だがユウキはピアーズのみ、守ることを選んだ。いや、そうせざるを得なかった。気づけば、生存者はもういなかった。
それがただただ悔しい。それでも1人はここまで守れた。あとは守り切るだけだ。
そろそろ天辺か。ゴンドラはゆっくりと回っている。ユウキは呼吸を落ち着け、調節し、スコープを覗き込んだ。観覧車を操作する機械。あれを破壊すれば、観覧車は停止する。
そう上手くいくはずないが命の危険に賭け事は付き物だ。
可能性を信じ、ユウキは照準を合わせ、一気に引き金を絞った。

「命中」

小さく呟き、一瞬の安堵に溜息を零した。
スコープから目を離し、停止する振動に備えるため、低く屈み、投げ飛ばされないようにしっかりとしがみ付く。
観覧車は完全に停止した。成功。
それにしても、増援は来ないのか。ユウキは上空を一瞥した。ヘリなど来る気配はない。まだまだ粘らなければいけないようだ。

*

男はヘリの中、帽子を深く被り直した。口元をキュッと引き締め直す。
一般遊園地内で発生したバイオハザード。今回の任務はその遊園地内にたまたまいたという未来エージェント候補である人物の援護。
しかもその人物は高官アダム・ベンフォードの娘だという。任務は至ってシンプル。遊園地内の感染者を一掃する。そしてその援護対象者に顔を見せてはいけない。
感染者の一掃は理解出来るがもう片方は何とも不可思議な内容だ。話によるとそのエージェント候補は完全なエージェント育成の為に変わった訓練を受けているという。
内容までは知らせなかったし、未だに理解に苦しむが自分は下にいる者だ。上の司令は絶対だ。

(全く…上にいる連中が考えることはわからないな)

見えてきた。小さな遊園地だった。十分、子どもが楽しめるくらいの広さではあるが少々、大人には物足りないかもしれない。
男は深々と溜息をついて、傍らに置いてあるライフル銃を手に取った。

「さあ、ショータイムだ」









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