ねえそれで許されたと思った?
「楽しかったですね!」
ピアーズは興奮で息を弾ませながら明るい調子で言った。
先ほどの恐怖はどこに行ったのやら…。ユウキは笑って頷いた。
「そうだね」
「今度はあれに乗りたいです!」
ピアーズが指さす先にはまた違うジェットコースターはあった。
今乗ったジェットコースターよりも見るからにハイレベルなものだ。子どもが乗るようなそんな甘いジェットコースターではない。
先ほど乗ったことによってスリルによる恐怖を克服したのか。
身長足りるかな、と思いチラッと見下ろしてみたがきっと足りるだろう。
「その前に休憩入れない?」
「休憩、ですか?ユウキさん疲れちゃいましたか?」
気遣う視線を受け止め、ユウキはほんの少し笑った。
「お腹空いてない?」
タイミングよくピアーズのお腹から空腹を知らせる音が聞こえ、照れ笑いを浮かべたピアーズは大きく頷いた。
*
ハンバーガーを頬張るピアーズを眺めながらユウキはストローに口をつけた。
じっと見てくるユウキに対してハンバーガーが食べたいと思ったのか自身のハンバーガーを差し出してくるピアーズ。
「違う、気にしないで食べなよ」
「だってユウキさん、俺をじっと見つめるから」
「違うってば。欲しくても私食べられないし」
戸惑うように見上げてくる瞳。
「あのね、私お仕事で食事制限があって食べられないんだ」
「じゃあユウキさんは好きなもの食べられないんですか」
「うん、まあ今のところは」
誤魔化すようにまた口にお茶を含む。
ピアーズから注がれる視線を感じ、気づかないふりをする。次の瞬間、何かが唇に押し付けられた。
視線を落とせば、さらに押し付けられ、口に含む羽目になる。その正体がわかり、ユウキは仕方なくそれを一口に噛み切り、咀嚼した。
それを飲み込み、ユウキは溜息をついてピアーズを見遣った。
「ピアーズ」
「誰も見てないからそれくらい大丈夫ですよ」
悪戯っぽく笑う彼に、全く、と笑みを零す。しかしすぐに笑みを消し去った。
胸がざわり、と騒いだ。悪寒がし、ユウキは思わず立ち上がった。
この緊張感…。突然、立ち上がったユウキに驚いたのか、それとも別の何かを感じ取ったのか不安そうにこちらを見上げてくる。
「ピアーズ、おいで」
有無を言わさない口調にピアーズはいつもと違う雰囲気を感じ取ったのか素直にその言葉に従ってくれた。
「手を」
大人しく手が握られる。
素早い動きでピアーズを抱え上げ、首に掴まるように指示をするとおずおずと首に腕が回された。