最終段階
「ハッキングテストは合格範囲だ。っていうか、もうこれはCIAのエージェントに匹敵するんじゃないか」
ぱらり、とページを捲ってデータを閲覧しているサクラギは片眉を吊り上げ、言った。
「機械系統は強いし自信あるから」
「うん、そんな感じする。ただあれだな」
一旦、口を閉ざして別のページを読むサクラギにユウキはスポーツドリンクを飲みながら首を傾げた。
何か問題があるとすればそれは着地の仕方や体術時の身体の捻りだろう。パワーがイマイチ足りず、速さしかない。
急所に上手く入ってもある程度の強さがなければ意味がない。
「体力だな」
「体力?」
思ってもみなかった原因に顔を顰める。
「そう、体力。お前は短距離、中距離型で長距離が苦手。ああ、後は武器の扱いも下手くそ」
サクラギは痛いところを突いてくる。
「武器の扱い?」
「ハンドガンは合格範囲スレスレ。遠距離射撃がダメダメ」
ライフルはどうしても軌道が目標物体から誤差が生じ、僅かに逸れる。
サクラギの言葉に耳を傾け続けた。
「ショットガンは衝撃にあと少し耐えられれば合格。当たってはいるから。それからロケラン。当たってはいるけどもう少し回りのことも頭に入れて撃って」
「被害は最小限に。」
「その通り。わかってるじゃん。あ、それでさ」
「ん?」
訓練用のスニーカーを脱ぎ捨て、普通の靴に履き替えながらユウキはサクラギを見上げた。
「ピアーズの事なんだけどさ、悪いけど今日も行ってくれない?」
「今日も?」
「うん、出来れば泊まって面倒を見てほしい」
今日は特別何もない。予定を頭の中で確認しユウキは頷いた。
「わかった。すぐ向かう」
「明日は運転テストだから頭に入れ直せよ」
二輪、自動車からヘリ、船、潜水艦。どれも乗りこなせないといけない乗り物。
事故を起こしてしまいそうでハッキリ言って恐ろしい。
身震いしながらユウキは頷いた。