アリゲーター

シェリーの悲鳴が聞こえる方へレオンとクレアはやって来た。
ゾンビに掴まれるシェリーの姿を確認した瞬間だった。レオンの片方の肩が軽くなったのは。
カツン、と靴音が響きユウキがレオンから降りたのだった。その顔色はあまり良くない。
レオンとクレアに驚いている暇はなかった。シェリーを助けなければ。2人はシェリーに襲いかかるゾンビに的確に銃弾を撃ち込んだ。

「怖いよ!」

シェリーは叫びながら走っていく。

「待って、シェリー!私よ!」

叫んでも無駄のようだった。すぐに追いかけにかかる。

「シェリー、止まって!」

ユウキの声にシェリーはようやく足を止めた。
怖々とレオンたちを見つめ、壁に身を寄せるシェリー。
レオンはそんなシェリーを怖がらせないように優しく声を掛けた。

「落ち着いて。俺たちだよ」

ホッとしたも束の間、大きく地面が揺れた。
バランスを崩しそうになっていたユウキの腕を掴み、支えてやる。

「何だ!?」

「地震…?」

戸惑うように震えを抑えた声でそう言うユウキにレオンは違うと首を振る。
何か大きなもの…まさかまたあの大きな化け物か?
視線を巡らせていたユウキとクレアがどこか一点を見つめ、目を見張った。

「嘘でしょ…」

クレアがそう漏らす。ユウキは恐怖のあまり何も言えないようだった。
2人が向ける視線の先を辿れば大きな長い口が見えた。続いて見えたのはびっしりと体を覆うウロコとギョロッとした丸い2つの黄色い眼球。
巨大なワニ――!?シェリー逃げて!とクレアが叫ぶ。隣りでユウキは銃を持ち上げるのが見えた。
ワニが顎を地面に打ち付ける。その衝撃で砂埃が経った。砂で目が痛む。ぼやける視界の中レオンは銃を持ち上げた。

「どうやって倒せば…」

クレアが銃弾をワニのあちこちに撃ち込みながら呟いた。
体を覆うウロコは頑丈そうだ。となると目か、或いは――
口の中に撃ち込むと大きなワニの怪物は怯んだ。やはりそうだ。クレアも感じたらしく「口の中は弱いみたい!」と叫んでいた。
ワニは大きな体を活かしてあちこちに体当たりし地面を揺らした。
3人はバランスを取りながらワニの怪物の口の中に狙いを定めてひたすら引き金を絞っていた。
ユウキが心配だ。レオンはチラリと彼女を見遣った。ほんの微かに体が硬直しているのがわかる。

「大丈夫」

彼女を庇いながらレオンはそう言った。戸惑うような双眸と目が合った。
ふっと柔らかく微笑み「大丈夫だ、俺がついてる」と励ますように言う。これで少しでも彼女の支えになればいいが。

「あれ使えない?」

マシンガンに切り替えてワニの口内に銃弾を注ぐ。
銃弾の雨を浴びてるワニだが一体いつになったら永遠に眠ってくれるのだろう。
予備のマガジンをセットしながらレオンは「どれだ?」とクレアに返した。

「天井のバルブよ!」

成る程。いいアイディアだ。
レオンが銃を持ち上げる前にユウキがササッとサブマシンガンで狙いを定めて天井に弾を撃ち込んだ。
最初の方は外れていたが見事白い煙を上げるバルブに命中し大きな爆発を起こした。

「しめた!」

レオンは喜びに思わず声を上げた。
大きなワニの怪物の体は燃えている。炎の熱さにワニは体を捩らせ、苦しみもがいた。
やがて動かなくなるワニにゆっくり近づきながら「やったか?」と誰に問うわけでもなく問うた。
ユウキは怖々とワニに近づいていく。そのときピクリと微かにワニの体が動いた気がした。レオンは反射的にユウキの腕を掴んで引き寄せた。
彼女のいた場所にワニの大きな口が空振る。ワニは暴れるようにまた体を獰猛に動かした。
まだ生きているのか。ユウキは「レオン…」と不安そうに自分を呼んだ。ユウキはレオンにしがみつき大きな怪物を怯えながら見つめていた。
そんな彼女を見てると胸が痛む。なぜこんないい子が事件に巻き込まれなければいけないのか。
しかしそれは一瞬だった。ユウキはレオンから離れて再び銃を構えた。素人を思わせる構え方。自分も感傷に浸ってる場合ではない。
レオンはさらに暴れだすワニの怪物に銃口を向けた。








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