Gウィルス


「警察署に隠れてろって言ったのに…ウィリアムに追われたのね」

女――シェリーの母はそう呟いた。
ウィリアム…?レオンはユウキを抱え直した。彼女には悪いが担がせてもらおう。
そろそろ“傷口が痛んできた”。エイダ・ウォンの巻いてくれた包帯に触れる。

「ウィリアム?」

「ウィリアム・バーキン」

シェリーの母はそう言った。遠く見据え、視線を落とす。

「シェリーの父親でありGを守るために街を地獄に変えた男」

まただ。また『G』というキーワード。

「またGか…Gって何なんだ?」

ピクリ、ユウキが動いだ気がした。
しかしそれ以上は動かない。すぐに気のせいだったと悟りレオンは真っ直ぐシェリーの母を見た。
母親は視線を上げ、レオンたちを真っ直ぐ見据えると口を開いた。

「Gウィルス」

レオンたちが困惑したことが分かったのだろう。女はまた視線を移し、説明した。

「私たちが娘のことも顧みずに開発した新世代ウィルスよ」

「新世代ウィルス?」

「そう。適合した生物を急激に進化させ超人化させる現代の福音…そのはずだった」

レオンとクレアはもう理解していた。
そのウィルスはそんな大層なものではなくただ怪物を生み出すだけのものであると。
人間の生を奪い、人々を恐怖に陥らせ、そうして死が広がっていく。そんな兵器であると。
ウィリアム・バーキンはウィルスを奪いにきた奴らから奪い返そうと自らGウィルスを投与した。

「でも間違いだった…Gと適合しても結局ウィルスに操られた怪物になるだけ。研究は間違っていたのよ」

あの化け物がウィリアム・バーキンだったのか。

「今の彼は繁殖を求めるだけ。宿主に遺伝子情報が近いほど優秀な子孫が作れるの」

レオンは血の気が引いていくのを感じた。
もしかしてユウキはあの時化け物と化したウィリアムに…。その時だ。

「シェリィィィイイイイイ!!」

低い不気味な声。続けて聞こえてきた甲高い女の子の悲鳴。

「シェリー」

「早く助けないと!」

クレアは訴えかけるようにそう叫び、走り出した。

「私にはまだやることがる」

「もう勝手にして」

クレアは呆れたようにそう言い、一人で走り出した。
レオンも後を追うために走る。

「胚を植え付けられたら――」

思わずレオンは立ち止まった。背中越しに伝わるユウキの熱い息遣い。
やはりユウキは…。

「地下研究所のワクチンを打つしか手はない」

シェリーの母親を一瞥しレオンは抱え上げているユウキの背中を撫でた。
レオンは深呼吸し、クレアの後を追った。







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