化け物のキス


「……っ!?」

ユウキは慌てて口を抑えた。

(何なの…!あれ…!!)

口許を抑えたものの相手はユウキの気配に気づいたようだった。
ビクリと体が硬直する。恐怖で何も考えられず銃を手にする利き手も言うことを聞いてくれなかった。
脳が命の危険を報せる。けたたましくサイレンのように警鐘が鳴り響く。
危険だ。この怪物はあの軍服を纏った巨大兵器よりも恐ろしい姿をしている…!
腕は左右非対称。右腕が恐ろしく発達を遂げていた。その手には鉄パイプが握られている。
これも元は人間だった。辛うじてボロボロな布切れが白衣に見えた。研究員か、この元人間は。
周りにシェリーはいない。いるのは自分だけ。つまり獲物はユウキオンリー。
化け物はゆっくりとこちらへ向かってくる。手を伸ばしジリジリと自分に近づいてくる。

「…っ…」

「ユウキ…!!クソ…」

「レオン!?…ぅうっ…!!!」

レオンとクレアの姿を確認した直後だ。衝撃がお腹に走った。
意識がぼわんと揺れ、ふっと遠くなる。つま先が地面を蹴った。ぐらりと体がされるがままになる。
自分でも何が起こっているかわからなかった。ただどんどん意識は遠く薄くなっていく。
ああ…このまま自分は死ぬのだろうか。
ぬるりと口許に接吻されるような、それでも気持ち悪い感触が伝わった。それを最後にユウキはぐったりと動かなくなった。

(レオン…助けて)

最後に浮かんだのは慕っているお兄さんのような存在のクリスでもなく頼れるお姉さんのクレアでもなくこの街で出会ったばかりの警官だった。








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