それぞれの行動

自分に秀でた才能――?
そんなものこれといって何一つない。強いて言うならば真面目なところか運動が多少できること。
本当にそれくらいだし、自分はごく普通の一般人だと思う。
ああ、普通ではないところが幾つかあった。今まさに命の危機的状況にあることが普通じゃない。
ユウキは先ほどエイダ・ウォンから貰ったサブマシンガンのグリップを握り締めた。
弾数は限られているが節約だとか余計なことは考えるなと言われた。そのことを考えるのはある程度の余裕が出てきてからだと。

「余裕…か」

そう言って笑う。エイダはきっとユウキに余裕なんてないことを見抜いている。
見抜かれているかといって動揺はしていないがあまり心地よくない。何故ならまだ自分は彼女を信用しきれていないから。
エイダ・ウォンもまた自分のことを信用していないだろう。目と表情を見ればわかった。
あの女はきっと易々と人を信用するような女ではない。

「はぁ…」

悲観的になっているぞ、あたし。ユウキは息を大きく吸って吐いた。
疑心暗鬼にもなっている。この状況は大きく思考がマイナスに傾く。冷静になれ、自分。
自分を叱咤しながら警戒しつつ確実に進む。自分がどこへ向かっているのかわからない。それでも生きてこの街を出なきゃいけない。
この街を出たらクリスを捜しに行くんだ。ユウキは幼い少女の悲鳴に顔を上げた。

「シェリー…?」

迷うことなく悲鳴の聞こえてきた方を目指してユウキは走り出した。

*

シェリーの悲鳴を聞いたクレアとレオンもまた走り出していた。
ふとレオンの頭の片隅に2人の女が過ぎる。レオンは顔をさらに険しくさせた。
あの2人は無事なのだろうか。エイダ・ウォンも勿論心配だが自分よりも年下の女の方が心配だった。
危なっかしい銃の扱い、時折怯えたように震えた小さな頼りない肩と背中、署長の前で見せた憎悪と殺意。何よりも…
走りながらレオンは僅かに瞳を伏せた。何故、彼女はエイダ・ウォンと共に行動しようと思ったのか。
何故エイダはレオンを頼らずに突き放して別行動に移ったのか。疑問が次から次へと浮かぶ。女は何を考えているのかわからない。

「女ってやつは…」

クレアからキッと睨まれる。

「何か言ったレオン?」

何てタイミングが悪いんだ。レオンは軽く笑った。

「いいや、何でもない」









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