守るために
死ぬときなんてきっとあっという間。
いや、きっとそうでない死もあるに違いない。
例えば、偶然死因となる兵器か何かが偶然にも威力がなく、或いは急所を外れた場合。
きっとすごく痛くて何も考えられない。走馬灯を見ることさえもなく、ただ痛みだけを感じて泣きながら逝くのだろう。
「何を考えてるの?」
セクシーな声にユウキは視線を上げた。
「死を」
真っ直ぐ前を見たまま続けた。
「死を考えてました」
淡々とそう言って息を吐き出した。
死ぬのは怖い。自分にはまだやりたいことがたくさん残っている。
クリスやジルの無事だって知りたい。
「でもいいの?レオンたちと一緒に行動しなくて?」
先ほどレオンたちと別れた。
人数が多ければ多いほどゾンビは集まる。そして感染リスクも高まる。
レオンとクレアはユウキとシェリーを守るのに集中することになる。それでは危険だ。
特にレオンは3人を守ることに集中している。集中力は疲労感を加速させる。そしてそれは死を招く。
なら自分が抜ければいい。ヒーローぶるつもりなんてない。それでもクレアも、出会ったばかりだけれどレオンも、勿論シェリーも守りたかった。
自分に力はない。非力だ。足手纏いであることも自覚している。
「そんなにあの3人を守りたいのね」
説明していないのにエイダはクスリと笑ってそう言った。
やはりエイダ・ウォンは侮れない女だ。自分の直感がそう告げている。
「でも私が貴方を守るとは限らないわよ?」
ユウキは笑った。
「…知ってます」
「そう…言わなくてもわかるでしょうけれど一応言っておくわ」
「言わなくてもいいです、“干渉は一切しない”ですから」
エイダが口を開くより前にそう言ってニッコリと笑った。