女の勘


「立てる?」

ユウキはコクリと頷き、東洋の女が差し出す手を素直に借りた。
立ち上がると軽く眩暈がし、誰かが支えてくれる。
ふわり。こんなときにでも香るシトラス。レオンだ、すぐにわかった。
視線を落としたままユウキはお礼を言い、レオンの胸を押し退けて自分の力で立てることを示した。
先ほどよりも楽になったがまだ体から熱やダルさは抜けない。

「貴方、は…?」

「エイダ・ウォン。恋人を探してるの」

どことなく感じる違和感に首を傾げる。
勘というヤツだろうか。この女が嘘をついているような気がしてならなかった。
しかし明確にはわからない正体不明の疑いを彼女にかけるのは理不尽だ。
女はそれだけ言うと一人でに歩き出した。
「おい!」レオンが慌てて背中を追いかける。
クレアは呆れ顔でそれを見送りながらシェリーとユウキに声をかけた。
しかしユウキの意識はエイダの遠ざかっていく背中へ向けられていた。
何者なのだろう。あの身のこなしと動きの無駄のなさは。スポーツのマネージャーをやっていたからかユウキは動きなどの観察力は人一倍優れていた。

「さあ、行きましょう」

「エイダ…ウォン」

「ユウキ?」

「うん、今行く」

ユウキの視線はエイダ・ウォンに向けられたままだった。








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