蝶々


地下の駐車場までやって来た。
冷たい空気が肌を撫ぜる。熱を持った腕には丁度よい温度だった。
感染しているのではないか。ユウキはふとそう思った。腕の熱なのか、単なる発熱なのか、全身が酷く熱く怠い気がする。

「クレア…」

思わず弱々しい声で彼女を呼んだ。自分の愛しい姉。
血の繋がりは確かにないがそれでも間違いなく慕っている――愛している――姉だ。
ずっとそれは変わらない。

「どうかした?」

シェリーの小さな手を握るクレアは首を傾げた。
ああ、いけない。これではまた甘えるようではないか。

「ううん、何でもない」

「気をつけろ、奴らだ」

レオンの声にユウキは顔を正面へ向けた。
ゾンビが唸り声を上げながら食肉を求めてふらふらとぎこちなく彷徨っている。
こちらに気づくと白濁した目をこちらへ向け、手をだらしなく伸ばしてやって来る。
中には早い動きのゾンビもいた。相当、飢えているのだろう。
銃声が近くで聞こえる。レオンとクレアが発砲しているのだ。自分もやらなければ。
ズキリ、腕が酷く痛む。上げられない程痛みが増していた。
膝から力が抜け、銃を零してしまう。
ああ、ヤバい。ヤバい感じ。早く銃を手にとって構えて撃ち込まないといけないのにピクリとも動かなかった。

「ユウキ!!」

誰かが自分の名前を呼んだ。でも誰かは認識できなかった。
体が熱い、痒い。あの人、美味しそう…。
銃声が何発も聞こえ、レオンの驚くような声が聞こえる。何が起こっているの?
今の自分では把握できなかった。意識がふわふわとしていてハッキリと定まらない。

「お嬢さん、ごめんなさいね」

艶っぽい声が耳元に聞こえた。すぐ傍で。
いい匂い、食べたい。ユウキはゆっくりと頭を上げた。
プツリ、首筋に何かが打たれた。チクリとした痛みにビクリと体が揺れる。
すう、と液体が入っていく感覚と視界のモヤが晴れて熱が引いていく感覚。
そんな感覚に戸惑いながらユウキはようやく自分の目の前に屈み込む東洋の美女を確認した。
女は妖艶な笑みを浮かべるとスッと立ち上がり掌を差し出した。

「立てる?」









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