恐怖を拭い捨てて


シェリー・バーキン。12歳。
自分よりも小さな手を握り直し、ユウキは一瞥し目を閉じた。
エレベーターが降りていく。その感覚すら気持ち悪さを増長させていた。
シェリーは母親の指示で警察署内に身を寄せ隠れていたらしい。この小さな少女はたった一人で屍たちが彷徨く警察署内にいたのだ。
怖かったに違いない。年上の自分ですら恐怖と気持ち悪さでどうにかなりそうなのだから。

「クレアと俺で先導する、君はシェリーを」

「…わかってる」

確認するように振り返るレオンとクレアに向かってこくんと頷き、しっかりとシェリーの手を握った。
頼るようにしっかりと握り返してくる小さな手。
怖がって逃げている場合ではないのだ。甘えて足手纏いになってはいけない。
反対の手で銃のグリップをしっかり握り、震えそうになる体を理性で押さえ込んだ。

「あたしを信じて」

「うん…」

シェリーは頷いたが怖い気持ちは消えやしないし薄れもしないだろう。
初対面の人間を信じろというのが無理な話だ。
それでも言わないよりはマシだとユウキは考えていた。
エレベーターの扉が開く。暗い廊下の奥から聞こえる唸り声と女性の悲鳴。
抱きついてくるシェリーの頭を撫でユウキは心臓を落ち着かせるように呼吸を漏らした。
きっと大丈夫、きっと生きてこの街を出る。








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