脱出することだけを
グシャリ。そんな音だった。
彼女はそんな音と共に床に崩れ落ちた。呻き声を上げて。
屍はもう動かなくなった。命を切ったのは自分だ。実感できない。自分が殺したことが。
纏まらない思考にユウキは手で顔を覆い深く息を吐き出した。
銃をゆっくりと下ろし、ズキズキと痛む頭を和らげるように米神を軽く揉んだ。
予想以上に罪悪感が胸の中でトグロを巻くように一気に膨れ上がる。
ジクジクと頭痛と同調するように胸も傷んだがそれを振り切りこちらへと駆けてくる二つの足音を振り返った。
「ユウキ!ああ、良かった…無事なのね!」
クレアがそのまま自分を抱き締める。
「うん…あたしは大丈夫だよ」
明るいのんびりとした口調で言い、抱擁に応えた。
「怪我はないか?」
レオンから投げられる質問にユウキはクレアの腕の中でこくりと頷いた。
冷静な自分が怖い。それでも立ち直っていない、傷はきっとこんな短時間で癒せない。
ショックを受けている自分をそれでも隠す。
悲劇ぶるつもりなどない。被害者ヅラしてクレアとレオンに泣きつくつもりなんてない。
何故ならこの悲劇は広範囲にして自分だけが受けている現実ではないからだ。
友だちを失ったくらいどうってこと――ズキリとまた胸が傷む――ああ、やめよう。
ここから脱出することだけを考えよう。
脱出すれば時間など幾らでもあるのだから。