揺レル、沈メル


くらくらする。視界が涙でボヤけていて上手く瞬きができない。
嗚咽が込み上げてくるがそれを押し殺して体を震わせた。
脳が自分の命の危機を伝え、銃を持ち上げることを指令する。感情がそれを押し止めていた。
できるはずがない。楽しく笑っていた毎日を思い出し、頬に零れる涙。
カッと目頭が熱い。無理だ、自分にはできない。
殺さないと自分が死んでしまう。それくらい理解できる。
こんな感情、偽善かもしれない。“友だち想いなあたし”を演じている自分なのかもしれない。
違う、違う、違う…!自分はきちんとジェニファーを想っている!彼女を大切なかけがえのない友だちだと思っている…!
彼女はもう化け物なのだ。殺さないと殺られるのは自分なのだ。
感情が無限のループにのめり込み抜け出せなくなった。負のループをぐるぐると回り続ける。

「ジェニファー…」

彼女の人間だった頃の名前を呼ぶ。
心の底でそうすれば彼女は戻ってくるのではないかと淡い期待を持って。
戻るはずがない、そんなはずない。
分かっていたのに絶望で埋まる心。二つの足音が背後から聞こえてきた。
足音でわかる。クレアとレオンだ。悟られるわけにはいかない。今後この感情が邪魔になる。
クレアとレオンは優しいから。
生き残るために邪魔になる感情を捨てなければ足手纏いになるだろう。
下唇を思い切り噛み、頬の涙を拭った。すうと息を吸い込み、目の前のゾンビを睨む。

「ジェニファーの仇…さようなら」

照準をジェニファーの額に合わせ、一気に引き金を引いた。








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