分かれ道


「何とか逃げ切ったか?」

息を上げるクレアに向かってレオンはそう言った。
同時にユウキの手を離しその拍子にユウキはへたり込んでしまう。
こんなに長距離を走ったのはいつ以来だろうか。
いや、少なくともこのレベルの距離はまだ中距離と言えるだろう。
ああ…。ユウキは嘆息し、天井を仰いだ。足が鉛がついたみたいに重たい。

「ええ…音も聞こえないし上手く撒いたみたいね」

クレアの言った通り廊下は怖いくらい静かだ。
あの大きな怪物は殺すなら破壊力を存分に活かして躊躇いなく殺すだろう。
大きな怪物の拳を真面に喰らえばタダでは済まない。
良くて骨が折れるに留まり、悪くて即死。一番嫌なのは骨が砕け、それが内蔵や器官系統に突き刺さって内出血するケースだ。
苦しみながら死に至ることとなる。想像するだけで悪寒がした。
ユウキはこのときばかり自分の豊かな想像力を呪った。

「待ってレオン、あの子だわ…!」

クレアは廊下の先を見据えていたかと思うと唐突に訴えるようにそう叫んだ。
そちらへ視線をやると弾かれたように女の子はこちらの存在に気づき悲鳴を上げながら逃げていってしまった。

「追いかけましょう、レオン」

「ああ…」

ああ、また走るのか。ユウキは横腹の辺りを摩りながら駆け出す2人の後を追った。
そのまま真っ直ぐ廊下を2人について走っていたが違う道に自分と同じくらいの年端の女が視界に入った気がした。
反射的に足を止めてしまい、気づけばクレアとレオンの姿はどんどん遠ざかる。

「ジェニファー…?」

そうだ、きっと彼女だ。あの髪型、背丈…間違いない。
ユウキは迷わずクレアとレオンが進んだ道とは別の方へ駆け出した。
友だちの無事を願って。








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