感情のない怪物


来た道から聞こえてきた爆音にユウキは何事かと顔を向けた。
ズシンとした重みのある破壊的な音に脅威を感じる。

「まさかゾンビ以外にも…いるの?」

ゾンビが出す音よりも明らかに大きい音。
それの正体が何かを突き止めるくらいしていいはずだ。
ユウキは体ごと振り返り、一歩踏み出した。だが音は徐々にこちらへとやって来る。
地響きがここまで伝わってくるようだった。
腹の底から感じる振動に胃が気持ち悪くなる。

(こっちに来る…!)

だとしたら危険だ。しかし曲がり角から走り込んできたのは2人の男女で。

「クレア…レオン!」

2人はホッとしたような表情をし、レオンはすぐに引き締め「run…![走れ!]」と叫んだ。
何と言っているか一瞬わからなかった。するとあの爆音が再度し、レオンのすぐ後ろの壁が凹んだ。
その壁に埋まっているのは人間の頭よりも大きな拳だ。
視線は軍服のような新緑の無機質な服を身に纏った腕、肩、灰色の大理石のような頑丈そうな肌、殺気の篭った虚ろな目に釘付けになった。
一体あれは何なの。ユウキは恐怖よりも戸惑いから呆然とした。








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