It's gonna be okay
「…痛」
乾いた冷たい何かの感触が手から伝わった。
ゆっくりとそれを握り締めようとするが握ることができないことに気づいた。
ああ…地面だ。ゆっくりと瞼を開ければアスファルトと炎が上がっていて。
傍に転がっているハンドガンを拾い上げ、ユウキは体を起こした。
視線をあちこっちへ巡らせ考える。
ユウキは自分の身に何が起こったか分からずにいた。
クレアとレオンと名乗った若い警官がいないことに気づき、うわっと分かりやすく顔を歪める。
あの二人が自分の傍にいないなんて。
「一人で向かうしかない…よね」
ボソッと呟き、絡まった髪を梳くように指を通して溜息を零す。
“一人で”そんな言葉が重くのしかかる。
こんな自分のような小娘に一体何ができるというのだろう。
そうこうしている間にゾンビたちが唸り声を上げながらこちらへと向かってくる。
あまり使い慣れない拳銃を握り締め、ユウキは駆け出した。
*
クレアはレオンが時折背後を振り返っていることに気づいた。
その顔はほんの少し心配そうで。
ああ、また彼女を心配する“お兄さん”が増えるかしら。
独りごちる。顔を伏せて笑った。
ユウキは兄さん――クリスの職場の人間からも可愛がられていた。
彼女の周りは自然と兄姉気質の人が集まる。
「心配?」
思わずレオンにそう声を掛ければレオンは困ったように苦笑し頷いた。
「ああ…ちょっとな」
とはいえクレアだってユウキのことが心配で堪らなかった。
クリスのこともあり、いつも以上に不安が掻き立てられる。
「きっと大丈夫よ」
その言葉はお守りのようなものだ。
自分に言い聞かせ、そう信じたいがために言った言葉だった。