ー シュガーラブポット ー
プロローグみたいなアレ
「ねぇ柚先輩、」
「どうしたの財前くん?」
「先輩はなして、相手の心を開かせることがそない上手なんですか?」
「あははっ、なに言ってるの。財前くんは優しいんだね」
隣で無邪気に笑う少女を横目で見やり柄にもなく可愛いなぁと微睡む財前。
彼女の一言一言が天使のように優しく、心に直接流れ込むのだ。それはとても温かい。
「俺が優しい?…はは、ユウジ先輩に腹抱えて笑われそうや」
「そうかな?わたしは優しいと思うけどなぁ…。だってね、財前くんはわたしの面白くない話をいつもいつも相槌を打ちながらちゃんと聞いてくれるの」
「謙也さんの話は九十九パーセント下らへんですから聞き流すどころか受け付けませんけどね」
「謙也くんの話は面白いよ〜?まぁ一氏くんたちみたいな面白さじゃないけどね」
「つまりヘタレた話っちゅー、」
「あ、駄目駄目!謙也くん結構気にしてるんだから禁句なの!」
なんやねんこの可愛い生き物。小動物みたいやんか。
謙也さんのためにむすーっと口を膨らませて、お人好しにも程がある。ちゅーかちょっとムカつくんやけど。もちろん謙也さんが。
「柚先輩がそんなんやから、謙也さんも部長も、柚先輩を妹みたいに大事にしとります」
「大事にされてるかは分からないけどー…仲良くしてもらってるよ。財前くんも、わたしが妹みたい?」
「何言ってんすか、全然ちゃいます」
妹やて見たことは一度もあらへん。
「じゃあお姉ちゃんみたいに思ったことは…!」
「あらへんから絶対あらへんから。先輩ドジですやん、ありえへんからそない羨望の眼差しで見つめんといて下さい」
姉貴やとかもっとあらへん。
何もないとこでつっこけるし、ボコボコした道やから先輩気ぃ付けて言うたときも手遅れで豪快に顔からつっこけとるし。
ほんで擦り剥けた頬に絆創膏を貼ってやるとな、いつも照れ気味に笑ってくれるんや。
ありがとう、って。
「先輩を兄弟みたいやとか、友達やとか、親友やとか、思ったことはあらへんです」
せや、俺はずっとずっと先輩が、
途端、俯く柚先輩。
やば…、気付かれた。
俺が先輩のこと想うとること、気付かれてしもた。
家族でもない友達でもないとなったらもうアレしかないですやん。
うわ…、恥ずかしいわ。
「ちょ、先輩…今の、」
「ざ、財前くんはわたしのこと他人だと思ってたんだね…ぅぅぅぅ゛…」
え。…………。
泣いて、はる?
「あれ?先輩何言うてんの?」
待ち、展開についていけへん。
「ととと…友達だって思ってたけど、ごめんわたし…自惚れてたね……ぅぅ」
「???」
【財前脳内】
他人<友達<好きな人
ポケットの中の携帯をカチカチ動かして、モバイル辞書を引いてみた。
あ、うん、念の為や。
たにん【他人】
@自分以外の人。
A親族でない人。
B関係のない人。部外者。
「……………。」
「ふぅっ…こ、これから…たくさん精進しますので、ぜ…ぜひお友達に……」
いや、精進っておい。
あぁもう先輩はアホや。
おまけにドジでこないに可愛いんやから俺が放っておけるわけないやろ。
「柚先輩、顔上げて?」
「……っっ、はい…」
うわー。先輩にうるうるした瞳で見上げられたら、予想以上にくるわな、コレ。
あかんやろ、俺のいろんなところを刺激しすぎや。
「俺が言い間違えたわ。先輩は友達や友達、しかも特別クラス」
「ほ…ほんと?わたし……Sランクなの?」
……食いつきそこですか。
俺のたった一言で明るい笑みに変わるんやから可愛いことこの上ない。
ああもう好きや。
好きや好きや大好きや。
先輩がこんなに好きやねん。
「いつか財前くんと、親友になれたらいいなぁ…」
遠くを見てボソリ、と。
残念ですけど先輩、その願いは絶対叶いませんですよ。
「 好きです 」
その言葉はまだ言うときやあらへんから、いつか絶対。
――…絶対。
せやから白石部長に謙也さん、あんたらの大事な妹ちゃん。
奪わせてもらいます。
彼とはよいお友達です
サイト設立間もなく頂いたクロウさんのリクエスト^^
今更なんだという話ですごめんなさい
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