十萬打 | ナノ





ー 白兎シリーズ 高校生編 ー






…なんやねんほんま。


雲一つない快晴。絶好調らしいお日様はギラギラと俺らを照らしていた。
今はそれすら鬱陶しい。

…何故ならば、


今日は立海大附属と練習試合。

俺の彼女である柚は立海軍団の輪の中心に現在進行いるのだから。





「小さいのぅ」

「小さいだろぃ」

「本当に高校生っすか?」


銀色頭と赤色頭とワカメ頭に囲まれて、もの珍しそうに見られていた。そらもうウチの体に穴が空くんやないかってぐらい。


「ほ、ほんまに高校生であります…」


「マスコットみたいじゃ」

「うわっ女の子が関西弁喋ってる!なんかすげー新鮮」

「“〜であります”は関西弁じゃねぇだろぃ」


え、ちょ、ほんまなんなん。そないに関西の女の子が珍しいんか…っ。
街に出たらものっそいおるから、四方八方から見るのはやめてくれへんか。

(しかも無駄にイケメン揃い…っ)

なんやねん、いつからテニスはイケメンさで競うようになった。

…まぁそうなったら蔵がダントツに一位やな。せやな。


立海は見た目チャラッチャラ〜な奴が多いんやなぁ、…光くんか!と一人ツッコミをしていると糸目の大人っぽい雰囲気の人に話しかけられた。


「すまないな、立海ではマネージャーを置いたことがないものでな。こいつらは君が珍しいんだよ」


わお、知的!

なんや、立海はバリエーション豊富やなぁ。
…もしかしてウチん所だけなんちゃうか?こない一貫してアホばっかなんは……。


(まぁそれがウチらのいい所でもあるんやけど)


「やっぱ俺の妙技綱渡りが一番すごかっただろ?」

「…俺のイリュージョンじゃき」

「いやいや俺のナックルサーブでしょ!」


え、えー…えーーっ…。


「皆様人並み外れてはるとー…」


「答えになってないじゃないっすか!やーっぱ天使化しとくべきだった…」

「そんじゃアレ、彼氏とかいんのか?やっぱり!」

「……プリ」


なしてテニスからプライベートへ話が飛ぶんやねん。吹っ飛ぶにもほどがあるわ。



「おるっちゅーたらおるー…んやけど、」

「マジ!?超気になる!」

「やっぱテニス部っすか!?」

「………ピヨ」


なんかものっそい興味深々に見られてんやけど……、うわー…言いづらいわ…どないしよ。



「えーっと…えっと」
「俺やけどなにか?」


(!)


ウチの隣には縮地法でも使ったのか、いつの間にやら蔵がいた。あ、ごめん、縮地法は嘘やで。


「へー…白石か。面食ったな」

「顔だけとちゃうもん!」

「白石さんっすか、いいと思います!俺尊敬してますから!」

「…蔵、何があったん」

「中学の合宿でダブルス組んだんや」

これ以上信者を増やしてどうする。白石宗教布教しすぎや。


「…白石ナリ」


銀髪の宇宙語土佐弁らしきを話す彼は、なんということか蔵の姿になっていた。

「!!!」

一度、中三の全国大会で目にしたことがある。また偽物蔵ノ介をお目にかかれるなんて…!


「完成度むっちゃ高いわ!あかん…微妙にときめく…!」

ぺたぺたと髪やら顔やら胸板を触る。


いや、だってむっちゃ凄い、

「終いや柚」

「ふぎゃっ」


本物蔵から首根っこを掴まれ、偽物蔵から離された。


「立海に迷惑かけたらあかんやろ」

「せやけどしーらーいーし!」

「金太郎の真似したって無駄やで。あ、せや包帯巻き直して欲しいねん、部室行くでー」

「偽蔵〜〜〜っ」


もうちょっと、もうちょっとだけ間近で見たかったんに…!飼い主とペットのようなウチらを三人は目をぱちくりして見ていた。


「あれは妬いたな、白石」

「意外に子どもっぽいとこあるんですね〜」

「赤也が言うんじゃなか」


そんな三人の会話は聞こえずに部室へ強制連行された。ってか、包帯巻き直すのになして部室まで行かなあかんの?

そう疑問に思うのも、時既に遅し。



「ふ、んんっ…」


部室に入った途端壁に押し付けられ、力強いキスが降ってきた。
容赦なく舌が侵入し、執拗に舌を絡め取られる。


「これやから可愛い彼女を持つのは嫌なんや」

「ウチ可愛くあらへ、ン…っ」


離れてもすぐに再度口付けられる。視界が霞むぐらい、力強く、何度も。


「ぷはっ、…はぁ」

「あかん…愛しくてたまらん」


呼吸を整えながら蔵を見上げれば、いつものように呼吸を乱してはいなくて、そして不安そうな表情をしていた。


「くら…?」

「立海の奴らと仲良く喋るんも嫌やったけど、俺の真似した仁王にときめくって…心臓止まるかて思ったわ」


あ……えっと、それはつまり…。


「なんやねん。柚は俺の顔が好きやから付き合うてたんか?」

「うん」

「ぐさっ!」


なして効果音口にしてんねん。胸にぐさっとなんか刺さったんやな。わかったわかった。


「大好きやで。蔵の顔も、声も、広い背中も、温かい熱も、優しい所も変態な所も全部全部」


蔵の一部なら、何でも好きやねん。


「もし仁王が俺に化けて詰め寄ってきたらどないするん」

「ウチは“蔵”が好きやし。“蔵”やないとあかんねん。“蔵”やないと愛せへん」

「…あかんニヤけるわ」

「…ウチも」

「俺も柚の全てが大好きや」

「蔵…っ、」



そしてどちらともなくキスを交わした。

蔵の唇もキスも、大好き。


「笑顔の柚もベッドで喘ぐ柚も全部、愛しとる」

耳元で囁かれたとき、ほんまに腰が砕けてまいそうで。蔵に与えられる甘い熱に浸りっぱなしだった。



「真田ー俺らも可愛いマネージャーが欲しいよぃ」
「欲しいッス!」
「白石ナリー…」

「三人ともたるんどる!」


時々は欲望に従いましょう

白兎高校生編で意外とモテちゃうヒロインに白石が嫉妬!というリクエスト
沙良さまこんなんでごめんなさいっ



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