十萬打 | ナノ




わたしの高校には女子にとっても人気な先生がいる。理科担当の白石先生っていうんだけど、かっこいいの、すっごく。

ちなみにわたしも数多くの生徒の一員で、先生の虜だったりする。しかも結構重傷、…っていうか本気。

先生の授業の教え方だとか、何気ない癖だとか、優しい口調だとか、全部全部大好きで。どうしたら先生の気を引けるのか毎日考えちゃう日々。そして考えぬいた結果がこれ。


「おー、今日もやってるなぁ」

「…白石先生、こんにちは」


放課後の理科室で、わたしがやってるのは変な実験。科学者たちからしたら普通の実験なんだろうけれど、一般ぴーぽー女子高生のわたしからしたらへんてこ極まりない。

薬品を投与して、液体はごっぽごっぽ沸騰中。あ、今青色に変わった。


「この実験難しいんやで?成功させるやなんて、花風はほんまに才能あるわ」

「じゃあ進路先は先生の助手がいいです」

「惜しいわ〜、俺は化学者やなくて教師やねんなぁ」

「じゃあ人生のパートナーにして下さい」

「惜しいわ〜、俺今結婚願望ないねん」

「じゃあ恋人にして下さい」

「おー…、紫色に変わったで、この反応は、」
「なんで話逸らすんですか」


むすーっと膨れっ面でいると白石先生は微笑みながらゆっくりと正面の席に座った。なによその笑顔は。大人の余裕ってやつですか。


「女子高生にからかわれんのも、結構困るもんなんやで?」

「からかってない、本気だもん」

「花風は今、青春時やろ」

「青春してるよ。放課後はいっつも先生と一緒だもの」


だからこんな実験をやってるんじゃん。理科がいつも満点なのも、先生が好きだから。
何もかも、先生のため。




「先生、好き」

「…花風」


「好き好き大好き」

「せやから、」

「大好き大好き大好き」

「わ、分かったから…」


伝わってない。わたしが先生をどんなに好きなのか、分かっていない。

だから、言葉にして伝えなきゃ。



「先生、好きなの」

「……っ、俺は、先生やから」


「先生、赤い」

「フラスコ、赤く変わったなぁ」


ごぽごぽと、フラスコの中の液体が赤く変わる。これはまぁ素敵な化学反応!


「…じゃなくて、先生の顔が」

「え?」

「先生の顔、真っ赤だよ」

「…………。」


あれ?なんで目を合わせてくれないの?数秒して顔を上げた先生は、溜め息をついて、また笑った。



「どないしよか花風。俺ん中で“好き”の化学反応が起きてんねんけど」



楽しい楽しい、先生とわたしの放課後レッスンの始まり。


世界からの虚脱


四万打煌毅さんのパロディリク、前サイトから引っ張って来ちゃいました
題名変えただけですごめんなさい



- 2 -

戻る