十萬打 | ナノ









「柚って俺と付き合うてんのにいつも白石と一緒おるやんか。俺、ほんまに柚の彼氏やんな?」

「白石は只の幼なじみなだけだよ?」

「柚はいつもそう言って片付ける。俺もう我慢出来へん」

「え……ちょ、」


「別れよう」




こんなやり取りを何度したことか。こんな成り行きでフラれたことは指を折るのも馬鹿馬鹿しいので数えたくもない。

また、今回も上手くいかなかった。





学校の廊下という公共の場にて女子に囲まれ、無数のラブアピールを受ける白石蔵ノ介。

ねぇ白石、またわたしフラれちゃったの。
ねぇ、それって誰のせいだと思う?




「白石」



ここから貴方を呼ぶけれど、取り巻きの女の子らの甲高い声にかき消されて届くわけもなかった。

決して爽やかスマイルを崩すことなく対応する幼なじみに、今日はいつにも増して殺意が芽生えた。


なによ、…なによ。

彼氏にもフラれて、その原因である白石はいつもみたいにみんなの中心にいて、わたしは……。

わたしは一人じゃない。

白石なんか、



「柚」

「っ、…白石?」

いつの間にか白石は目の前に立っていた。女の子たちを解散させて、一人、わたしと向き合うように。



「今さっき、呼んだやろ?」

「呼んでない」

「柚の声は、どこにいても聞こえるんや」

「っ、」


嘘八百。
わたしが貴方を刺すように睨みつけながら、妬んでいたことなんて分かってないでしょうに。



「また、別れたんか?」

「……、」


そんなに王子様ぶらないで。優しくされると同情されているみたいで自分が惨めで仕方なくなる。

白石なんか、嫌い。



「っ、白石のせいよ!」

「…柚」

「なによ、自分は人気者で誰からも好かれてさぞかし鼻が高いでしょうね。わたしはいつもいつもいつも、白石がいることで彼氏にフラれて、一人になるの!いつもよ!そんな可哀想で寂しそうなわたしを見て白石は同情してるんでしょ!?だから一緒にいるんでしょ!?わたしが別れを告げられるとき、どんな想いなのか知ってる!?白石には到底理解出来ないでしょうね!」


はぁ、はぁ。

怒鳴りつけて満たされるわけもなく、ただ、自己嫌悪と虚無感が募るだけ。



白石はというとわたしの御乱心な姿を何一つ表情を変えずにそれを聞き入れていた。


「それでも俺は、一緒におるから」

「な…っ!」

「誰と別れても俺はずっと一緒におるから」


そういうのが同情っていうのよ。


嫌い嫌い嫌い、大嫌い!


白石なんか、



「せやから早よ俺を選び」


白石、なんか………。



思い出した。

遠い昔から、白石は隣にいた。
大好きな幼なじみである白石がみんなから騒がれることで、人気者になることで遠く感じるようになった。寂しさを覚えた。

傷つくぐらいなら自ら離れてやろうと蔵ノ介から白石へ、呼び方を変えた。白石の代わりとなる彼氏を作った。


そう、わたしは白石の代わりを探していたの。



「蔵ノ介、」

「おかえり、柚」



そうだった。
わたしは昔から蔵ノ介のことが、



閃光プラネタリウム


らら魅さんの白石一途リクエストを書き直しました^^
白石は小さな頃から一途に主人公を想っていた、という補足


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