白兎を追いかけて | ナノ


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やって、しまった。


朝の登校時間。

俺は切羽詰まった思いで階段を上がっていた。


ありえん、ほんま。
なにがバイブルやねん。

とりあえず、ほな、原因となる昨日の出来事を振り返ってみよう。


まずは柚の爆弾発言。

好きな人が、いる、と。

いや、ちょ、知らんし。


ってか、え!?誰やねん!みたいな。内心ハラハラしてたけど最近ええ感じやったから、もしかして俺かも、なんて考えてた。


そんな淡い期待も一瞬で消えた。


アクセサリーショップにて、ウサギをモチーフにしたネックレスを柚が物欲しそうにした。

チャンスや!って。
俺が買ったろう!と、思った。


やけど、柚から出た一言は、あまりにも衝撃的やった。


「…ちゃんと、か、彼氏作って、買ってもらうから…蔵に買ってもらわんでもええねん」


その言葉が意味するのは、俺以外の彼氏を作るっちゅーことで。

頭の中が真っ白になった。


気付いたときには柚の腕を無理矢理引っ張り、外へ連れ出していた。

柚の瞳に俺は映っていない。

違う誰かが映っている。


…誰やねん。


柚の心に入り込んだヤツは、一体誰やねん。


怒りが頂点に達していたそのとき。

柚の携帯に新着メールが一件。

相手は薮内。

内容は、告白。


あぁ、こいつか。


愛しくて愛しくてたまらない柚の心を盗んでいったのは薮内だったのか、と。

悟った瞬間、俺は我を忘れていた。



絶対に渡すものかと必死に柚にキスをした。


余裕がなかった。


柚が誰かのモノになってしまうことを考えるだけで、壊れてしまいそうやった。

本能のままにした野性的なキスは、柚を恐怖させただけ。


案の定、柚は俺から離れた。


逃げるその後ろ姿はすぐ遠くなって、今度こそはほんまに、二度と帰って来ないのではないかと心から思った。




白く白く映える悲叫
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