白兎を追いかけて | ナノ





―…次の日。


ウチは悩んでいた。

それはもうめっちゃ、かなり。


たこ焼きを食べるならトッピングは明太マヨにするかチーズにするかってぐらい。

ウチは悩みに悩んでいた。

…原因は他にもない、コレだ。


「花風へ
うわー書いてしもた。
堪忍、堪忍、しつけー男て思わんといてや?
花風とメールしたいな思って手紙書きました
嫌やて思たらシカトしてええからなsoccer-★≡tenipuri.ne.jp

薮内徹平より」


わ〜アドレスに謙也が入っとる。むっちゃ不吉やんー(笑)なんてのは置いといて。


(…どないしよ)


シカトするべき?


…って、誰でもシカトされたら辛いに決まっとるよな。あないに優しくしてくれる薮内くんなんやから。

…でも、優しいからこそメールしたらあかんような気もする。

(中途半端な優しさは、相手を期待させてしまうだけや)

薮内くんをもっと深く、傷付けてしまうかもしれない。


机で一人考え込む中、耳障りな声が聞こえて来た。


「ふふっ、もーぅ蔵ノ介くんったら〜」

猫なでで、甘ったるい。


蔵ノ介くんやて!?


ウチはこれでもかってぐらい鋭い目つきで声の方を振り向いた。

教室のドア付近にて、会話をするのは蔵と皆様覚えていますか?な佐倉さん。

ホラ、あいつやて。
蔵に告白してアドレスもゲットしたべっぴんな人。



「ほんま堪忍〜」

「ふふっ、いいよー。許してあげる」


(………………。)


は!?


なにが堪忍なん!?

許してあげるてなん!?

なんやねんあんたらの世界!


腸(はらわた)が煮えくり返りすぎてすき焼きパーティーや。

我慢ガマンがまんGAMAN。

蔵はウチの彼氏ちゃうんから。
誰とメールしていても、文句は言えん。


…なんか悔しなって来た。

やけど、悔しいからって腹いせのように薮内くんとメールするのはアカン。


「ほな蔵ノ介くん。また今日メールするから」

「おおきに、またな」


……アカン、…ねんけど。

今日も?またメール?

…なんやねん。

ウチにちゅーしたのは気紛れか、蔵のアホンダラ。




水溜まりに月と溺死
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