白兎を追いかけて | ナノ

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蔵とキスを交わしたあの日。


次の日も、その次の日も、何事もなかったかのように蔵は接して来た。

キスなんて、ほんまはなかったんやないかと疑ってしまうくらいフツーすぎるウチらの関係。


あやふやになっているキスの理由。

気付けば、学校の方は文化祭ムード一色になっていた。



「ほな、文化祭の練習に行ってくるからな」

「ん、行ってら〜」

「ええ子で待ってるんやで」

「はぁーい」


いつものようにウチの髪をくしゃりと撫でて、颯爽と教室から出て行った。

たったそれだけの行動だけで、教室の女子はうっとりと蔵を見つめる。


文化祭に告白するんだーとかなんとか。
聞き捨てならんこともチラホラ。


(ははは…さすがプリンス)


確かに蔵は宇宙一かっこええし、性格やってむっちゃええ。

せやけどな、大切なことを忘れたらあかん。
蔵は変態なんやで!

エクスタシーは日常茶飯事。
っちゅーかもう存在自体がエクスタシー。

カブリエル(カブト虫)のために夏に暖房入れたらしいし、カブト虫が冬越せんことを知って泣いたりもした!

言わば残念なイケメン!

そりゃもうとっても残念な!


「せやからみんな蔵んこと見らんといてくれんかなぁ」

「ねぇ柚、突っ込んでええ?
全部がわざと口に出てること突っ込んでもええ?」

「わーっ優衣やん」

「最初から横おったわ。今気付いた的な設定止めてくれる?」


「おー…堪忍堪忍。お詫びに1コケシあげるで」

「いらんわ。っちゅーか1コケシてなんやねん」


ウチらは優衣の席でコンビニの新作のお菓子、苺つっぶつぶポッキーを食べていた。

旧作は苺つぶつぶポッキー。

苺のつぶつぶさが違うんやな、これが。



「ポッキーってなんか、いやらしいな」

「いや、私は断じて思わんけど」


「やってこん前小春ちゃんと一氏が二人で一本のポッキー食べよったもん」

「あー…、うん、そりゃしゃあないね」


「あ、食べる気失せた」

「奇遇やな、ウチもや」


食意喪失。

一氏め、しばいたろ。



愛しさと恋しさの連立
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