白兎を追いかけて | ナノ




昨日は、あれからすぐさま部屋に戻って布団に入った。

泣きたくてたまらなかったけど、我慢した。…というよりも唇を噛み締めてこらえたといった方が正しいんかもしれん。

なんで蔵はあんなに悩んでいるんやろう、ウチに言えんことは何なんやろう、ウチに…腹を立てているんやろうか。


あんなにも恐い蔵は初めてやった。
ウチは相当蔵を怒らせてしまうことをしてしまったんやな……。

ウチの汚い入浴姿のせいやろうか。…多分、それだけやない。


他になんかしてしもうたかな?

悩みに悩みまくって寝不足。


(……一睡もしとらんわ)



そんなこんなで朝を迎えた。


賑わう大広間。

時間通りきっちり起きて、マネージャーの作った朝食をとる部員たち。


「なんかおかしないか?財前」

「なにがですか謙也さん」


「…、なんかが変やわ」

「謙也さんの寝癖ですか?そりゃもう最悪でしたよ。いびきはかくわ、寝相はひどいし寝言もフルコーラスでー…、」

「…俺ちゃうわ。この広間の中で、っちゅー話や」

うーんと首を捻る財前。


賑やかで明るいいつもの四天宝寺テニス部。見回してもおかしな光景などなにも……、


「…なにか変、ですわ」

「せやろ?」


なにかが、足りない。いつもある光景が、ない。


え――!昨日ワイらが滝修行しよる間、千歳クマ倒しよったん!?ええなええなええな――!」

「よかやろー金ちゃん。捕獲したクマは柚に食料としてちゃんと寄付したんばい」


「ほんまー!?ほな、もしかしてこのお吸い物ん中に入っとる肉は…!」

「新鮮なクマの肉ばい。世の中は弱肉強食たいね」


「「…………。」」


「謙也さん、おかしいことってこのお吸い物ちゃいますか?」

「…ちゃうわアホ」


「なんでお吸い物飲むのいきなり止めたんです?」


「ヘタレの事情やろ」


ちゃうわ!と謙也が口を開こうとして、声の主へと振り返ったところでフリーズ。

声の主はというと、隅っこのテーブルで一人で朝食をとっていた。




流れ星が墜落した日
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