白兎を追いかけて | ナノ

晴天。太陽がギラギラ照りつける夏日に、全力で走るなんてありえへん。紫外線は乙女の大敵!全身をジャージにくるめ、タオルで首を隠す。紫外線は眼球にまで支配が及ぶから、なんて理由でサングラス。


「あのマネージャーやる気が感じられへんのやけど…」
「ばっか、あれ花風柚だっつーの」
「え!あの、スーパー少女とか呼ばれてる超人女子?」
「人は見かけによらねぇよな。噂では熊も倒せるらしい」

ぴくり。側を通るサッカー部二人の会話が耳に入る。君たち、地獄の入り口へこんにちは。


「誰が熊も倒せる超人女子やーー!」

「「ぎゃーーーー!」」

右手にストップウォッチ。テニス部の長距離走を計るのは、我らが四天宝寺テニス部マネージャー花風柚。紫外線対策しか考えてないようで、実はそうでもないのだがやっぱりそうであったりする。


「柚先輩なにしてるんすか」
「ひ、ひかるん…!サッカー部の奴等がウチを苛めるんや!」

「そらいけませんね。あんたら、柚先輩は熊を倒したんやない。…熊そのものなんや」
「はい光もう一周〜」

躾のなっていない後輩を再び走らせる。知ってんで、熊を倒した噂流したのあんたやろ。笑顔で走り行くのを見送った後、一回り大きな影が私を覆った。


「柚、」
「蔵っ…!」

大嫌いな太陽光も、蔵に浴びせると全てが輝かしく愛しく見える不思議。

「ちょい柚で休憩。…ぎゅー」
「ぎゅー…!!」

ウチが首に下げているタオルで密着しながらに汗を拭った後、容赦なく抱きついてくるウチの彼氏。
やっぱり今日も、大好き。


「ありがとう」を君に。
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