白兎を追いかけて | ナノ




財前から聞かされた事実。あんなにも自責の念に駆られているアイツは初めて見た。
財前はただ…柚のことが好きで好きで仕方なかったんや。それだけやったんや。
想いを消し去ろうとして、我慢して我慢して、気持ちを押し殺した挙げ句暴走した。決して許されることやないけれど、もし立場が逆やったら。俺と財前のポジションが逆やったら。
ただひたすらに柚の幸せを願えたやろうか?違う男と歩む幸せの道を、祝福のみをして送り出すことが出来たやろうか?



胸を張って否定できないのは、それほど柚のことが好きやから。
幸せを願う気持ちに、『好き』という、どこまでも純粋で不純な想いが邪魔をする。


俺は柚のことが理解できへんかった。財前にキスをされて、それを隠し通そうとしたことも、自ら財前の元へ行って二度目の口付けを交わしていたことも。

財前に気持ちが片寄ってしまったんやないかと疑った。そうとしか考えれへんやった。

せやけど事実は違った。


「独占欲強い人って、自分のモノ汚されたとき、嫌になって捨てたくなるもんなんですよ」


財前の一言に、柚は深く深く悩まされていたんや。俺に嫌われるかもしれない、と、言いたい気持ちと言えない気持ちで葛藤してたんや。
信じてもらえんかったのを悔いる権利なんて俺にあらへん。信じれる彼氏になれてへんかった俺の責任なんやから。


柚、ごめんな。
いっぱいいっぱい悩んだんやんな。俺に言えへんで苦しかったやろ。辛かったやろ。


早よ抱き締めたい。

そして俺を、許してほしい。



花びらの抱擁
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